質問番号2021-0106 で交流き電方式用の「交流き電用変電所」を説明して頂きましたが、電気鉄道には直流き電方式と交流き電方式が有りますので、直流き電方式用の「直流き電用変電所」について説明して下さい。
直流電気鉄道は、き電変電所で特別高圧の三相電力を受電して、整流器用変圧器と整流器で直流に変換し、き電用遮断器を通して電車線路(き電回路)に電力を供給している。 ここでは、直流き電用変電所の構成、変成器(整流器用変圧器とシリコン整流器)および直流高速度遮断器について説明します。
1. 直流き電用変電所の構成
直流電気鉄道は、変電所で特別高圧三相電力系統から受電し、変成器で(変圧器と整流器)で適正な直流電圧に変換しています。き電側には直流高速度遮断器が用いられ、電車へのき電、事故時の電流遮断や作業時のき電区分を行います。変電所からは方面別に電力をき電するため、変電所前ではエアセクションで区分しています。エアセクションではパンタグラフを介して大きな負荷電流が流れるため、セクションが痛まないように電車は停止しないようにしています。図1は直流き電用変電所の構成とき電回路です。
変電所のき電電圧は、JRや民鉄の都市圏や近郊電車など多くは1500Vですが、地下鉄や地方鉄道では、750Vや600Vがあります。変電所間隔は、条件により異なりますが、例えば1500V方式の場合は、都市圏の幹線で5km程度、亜幹線で10km程度です。
2. 変成器(整流器用変圧器とシリコン整流器)
交流から直流に変換する編成装置は変圧器と整流器からなり、例えば直流1500V方式の場合は、変圧器で1200Vに降圧し、シリコン整流器で標準電圧1500Vの直流に変換しています。整流器は電流波形ひずみを小さくするために、30°位相差の2組の6パルス整流器を組み合わせた12パルス(相)整流器としています。図2、図3は12パルス整流器です。 図4は純水沸騰冷却方式の並列12パルス整流器と、整流器用変圧器の外観です。
整流器の標準電圧V1は定格電流が流れたときの電圧をいい、無負荷電圧V0との比率を電圧変動率と称し、次式で表わされます。
電圧変動率は、JRでは8%、民鉄では6%程度にしています。
3. 直流高速度遮断器
直流電流は交流のように電流零点がないため、一般の交流遮断器の原理では故障電流を遮断できません。図5は高速度気中遮断器で、アーク消弧室を設けており、開極時に発生したアークは吹消しコイルの磁力で消弧室に押し出され、アークの延伸と冷却効果で、アーク電圧が電源電圧より上昇すると、電流は遮断されます。故障遮断時間は18ms程度です。
最近は遮断時の低騒音化と無アーク化のために、民鉄で、図6の高速度真空遮断器が用いられるようになりました。主回路に真空バルブを用いており、遮断時にLC共振回路で1000Hz程度の高周波電流を発生して、事故電流に重畳して電流零点を作って、事故電流を遮断しています。
(持永芳文 記)