再生可能エネルギーにはどのような種類がありますか?その種類とそれぞれの特長,それぞれの利用状況,海外との比較などの概要について紹介して下さい。
再生可能エネルギーには、以下に示すいくつかの種類があります。この中でも特に実用性が高く、政府がその導入を推奨しているのが ①~⑤ の5つ(太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス発電)です。これらの5つの再生可能エネルギーは、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する 特別措置法(固定価格買取制度: FIT) の適用対象になっています。 < 参考文献 については、末尾をご参照下さい >
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1. 太陽光発電
太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象(光起電力効果と呼ばれる)を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換する発電方法です。日本における導入量は、近年着実に伸びており、2018年度末累積で5,337万kWに達しました。太陽光発電導入の実績では、中国、ドイツとともに世界をリードしています。
特長として、エネルギー源が太陽光であるため、地域における偏在性が少なく導入しやすいことが挙げられます。また、他の発電設備に比べて、設置スペースや設備構成の容易さから、設置がしやすく、蓄電池と組み合わせて遠隔地の電源や非常用電源として用いられることがあります。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考>
原子力・エネルギー図面集「日本の太陽光発電導入量の推移および世界との比較」 https://www.ene100.jp/zumen/3-1-4
東京電力リニューアブルパワー「太陽光発電のしくみ」 https://www.tepco.co.jp/rp/business/megasolar/mechanism.html
2. 風力発電
風の力で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こす発電方式です。風力発電は、風の運動エネルギーの最大30~40%程度を電気エネルギーに変換でき、比較的効率の高いことが特徴です。一方で、風の強弱で発電量が変動し、無風状態では発電ができないなど、エネルギー源としては不安定であることや、年間を通じて風の強い場所が限られること、ブレード(羽)の回転による日射の変化や騒音のため、住宅地域近くに設置できないなど、立地の制約もあります。2017年度末の累積導入量は、350.3万kWであり、世界の導入量の約1%となっています。
(文献 [2] より引用、一部改編)
<参考>
原子力・エネルギー図面集「日本の風力発電導入量の推移および世界との比較 」 https://www.ene100.jp/zumen/3-1-5
東京電力リニューアブルパワー「風力発電のしくみ」 https://www.tepco.co.jp/rp/business/wind_power/mechanism/
3. 中小水力発電
中小水力発電は、水の力を利用して発電する水力発電の中でも中小規模のものを言います。3万kW以下の中小水力発電の導入ポテンシャルは 1,500 万kW 程度賦存しており、その有効活用が期待されています。我が国では、出力 1,000kW以下で水路式及びダム式の従属発電(他の水利権を得ている水を利用した発電)である水力発電が「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」により新エネルギーとして位置づけられており、RPS 法の対象となっています。また、3 kW未満の中小水力発電を対象とする「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が平成 24 年 7 月から始まっています。
昼夜、年間を通じて安定した発電が可能で、出力変動が少ないという長所があります。一方、短所として、設置地点が限られる(落差と流量がある場所に限定される)ことや、水の使用について、利害関係が付きまとうこと、法的手続きが煩雑で面倒であることなどがあります。
(文献 [2] より引用、一部改編)
<参考>
全国小水力利用推進協議会「小水力発電とは」 http://j-water.org/about/
4. 地熱発電
日本は火山帯に位置するため、地熱利用は戦後早くから注目されていました。マグマの熱で高温になった地下深部(地下1,000~3,000m 程度)において、地表面に降った雨や雪が地下深部まで浸透し、高温の流体 (地熱流体) となります。これが溜まっているところを地熱貯留層と言います。地熱発電は,地熱貯留層より地熱流体を取り出し、タービンを回転させて電気を起こします。
総発電電力量はまだ少ないものの、安定して発電ができる純国産エネルギーとして注目されています。 発電方式として、フラッシュ発電やバイナリー発電があります。フラッシュ発電は、主に200℃以上の高温地熱流体での発電に適しており、地熱流体中の蒸気で直接タービンを回します。バイナリー方式は、地熱流体の温度が低く、十分な蒸気が得られない時などに、地熱流体で沸点の低い媒体(例:ペンタン、沸点36℃)を加熱し、媒体蒸気でタービンを回して発電するものです。新エネルギーとして定義されている地熱発電は「バイナリー方式」のものに限られています。
地熱発電所の性格上、立地地区は公園や温泉などの施設が点在する地域と重なるため、地元関係者との調整が必要なことなどが課題となっています。
(文献 [2],[3] より引用、一部改編)
<参考>
世界の地熱発電 https://www.chinetsukyokai.com/information/sekai.html
5. バイオマス (発電)
バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称です。バイオマス発電では、この生物資源を「直接燃焼」したり、「ガス化」したりするなどして発電します。バイオマスエネルギーには、木質燃料、バイオ燃料 (バイオエタノール)、バイオガスなどさまざまな種類があります。資源が広い地域に分散しているため、収集・運搬・管理にコストがかかる小規模分散型の設備になりがちという課題があります。
バイオマス利用技術は、既存のエネルギーシステムとの親和性が高く、世界でも利用が進んでいる再生可能エネルギーです。
(文献 [1],[2] より引用、一部改編)
<参考>
中部電力「バイオマス発電のしくみ」 https://www.chuden.co.jp/energy/renew/biomass/bio_shikumi/
日本木質バイオマスエネルギー協会 https://www.jwba.or.jp/database/renewable-energy/
6. バイオマス (熱利用)
バイオマス熱利用は、バイオマス資源を直接燃焼し、廃熱ボイラから発生する蒸気の熱を利用したり、バイオマス資源を発酵させて発生したメタンガスを都市ガスの代わりに燃焼したりして利用することなどをいいます。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考>
林野庁「木質バイオマスの熱利用」 https://www.rinya.maff.go.jp/j/sanson/kassei/pdf/shishin_s2-3.pdf
7. 太陽熱
太陽の熱を使って温水や温風を作り、給湯や冷暖房に利用するシステムです。国内で最も普及しているのは、戸建住宅用太陽熱温水器ですが、ホテル、病院、福祉施設など業務用建物でも使用されています。エネルギー源は太陽エネルギーなので、エネルギー源のコストは無料です。また、簡単なシステムであるため、特別な知識や操作が必要なく、一般事務所だけでなく給湯利用の多い介護施設などでも手軽に導入できます。
(文献 [4] より引用)
<参考>
資源エネルギー庁「太陽熱利用システム 3導入状況と今後の見通」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/mitoushi.html
8. 大気中の熱
ヒートポンプを利用することにより、空気から熱を吸収することによる温熱供給や、熱を捨てることによる冷熱供給ができる再生可能エネルギー源です。 空気熱を利用した設備としてヒートポンプ給湯器や空調用エアコン等があります。
ヒートポンプとは、気体に圧力がかかると温度が上がり、圧力を緩めると温度が下がるという原理 (ボイル・シャルルの法則)を利用し、大気中から熱を得るシステムのことです。 わが国の民生部門(家庭・業務用)の空調・給湯需要および産業部門の加温や乾燥等の加熱用途や空調用途において普及した場合、日本のCO₂総排出量の約10%のCO₂排出抑制が可能になります。
(文献 [1],[5] より引用)
<参考>
ヒートポンプ・蓄熱センター ヒートポンプについて https://www.hptcj.or.jp/study/tabid/101/Default.aspx
9. 地中熱
地中熱とは、浅い地盤中に存在する低温の熱エネルギーです。大気の温度に対して、地中の温度は地下10~15mの深さになると、年間を通して温度の変化が見られなくなります。そのため、夏場は外気温度よりも地中温度が低く、冬場は外気温度よりも地中温度が高いことから、この温度差を利用して効率的な冷暖房等を行います。
特長として、空気熱源ヒートポンプ (エアコン)が利用できない外気温-15℃以下の環境でも利用可能、放熱用室外機がなく稼働時騒音が非常に小さい、地中熱交換器は密閉式なので環境汚染の心配がない、冷暖房に熱を屋外に放出しないためヒートアイランド現象の元になりにくいなどがあります。一方、設備導入 (削井費用等)に係る初期コストが高く設備費用の回収期間が長いということがあります。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考>
地中熱利用促進協会 地中熱紹介 http://www.geohpaj.org/introduction
10. 雪氷熱
冬の間に降った雪や、冷たい外気を使って凍らせた氷を保管し、冷熱が必要となる時季に利用するものです。寒冷地の気象特性を活用するため利用地域は限定されますが、資源は豊富にあることから注目される取組です。寒冷地では従来、除排雪、融雪などで膨大な費用がかかっていた雪を積極的に利用することでメリットに変えることも可能になっています。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考> 札幌市・雪氷熱利用 https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/shokai/snowiceenergy.html#s04
11. 温度差エネルギー
地下水、河川水、下水などの水源を熱源としたエネルギー利用です。夏場は水温の方が温度が低く、冬場は水温の方が温度が高いという、水の持つ熱をヒートポンプを用いて利用したものが温度差熱利用です。冷暖房など地域熱供給源として全国で広まりつつあります。
特長として、システム上燃料を燃やす必要がないため、クリーンなエネルギーと呼ぶことができます。また、熱源と消費地が近いこと、及び温度差エネルギーは民生用の冷暖房に対応できることから、新しい都市型エネルギーとして注目されています。建設工事の規模が大きいためイニシャルコストが高いことが課題となっています。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考>
札幌市・温度差熱利用 https://www.city.sapporo.jp/kankyo/energy/shokai/thermalenergyconversion.html
12. 大型水力
水力発電は、水が高いところから流れ落ちる力を利用するため、輸入に頼ることなく長期にわたり安定した発電が可能です。 また、発電の過程で地球温暖化の原因と考えられている二酸化炭素を排出しない、自然環境に優しい発電方法です。エネルギー資源のほとんどを輸入に頼る日本は、この水力発電の更なる活用が望まれます。水力発電は、他の電源と比較して「非常に短い時間で発電開始 (3~5分) が可能」「電力需要の変化に素早く対応(出力調整)が可能(流れ込み式を除く)」という特徴があります。このような特徴を生かして、流れ込み式はベース供給力として、調整池式・貯水池式・揚水式はピーク供給力として、無くてはならない重要な役割を果たしています。
(文献 [1] より引用、一部改編)
<参考>
資源エネルギー庁・水力発電について https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/hydroelectric/
13. 波力発電
波力発電は、波のエネルギーを利用した発電システムで、主として、装置内に空気室を設けて海面の上下動により生じる空気の振動流を用いて空気タービンを回転させる「振動水柱型」 、可動物体を介して波力エネルギーを油圧に変換した後油圧モータ等を用いて発電する「可動物体型」、波を貯水池等に越波させて貯留し水面と海面との落差を利用して海に排水する際に導水溝に設置した水車を回し発電する「越波型」の 3 種類に区分されます。また、設置形式の観点からは、装置を海面又は海中に浮遊させる浮体式と、沖合又は沿岸に固定設置する固定式とに分けられます。
(文献 [2] より引用、一部改編)
<参考>
佐賀大学 海洋エネルギー研究センター「波力発電」 https://www.ioes.saga-u.ac.jp/jp/ocean_energy/about_wave_0
14. 潮流発電
潮流発電は潮流の運動エネルギーを利用し、一般的には水車により回転エネルギーに変換させて発電する方式である。潮流は月と太陽の引力で生じる周期的な変動である潮汐によって起こる水平方向の流れであり、潮の干満によって規則的に流れるため、発電に利用する場合には予測が可能であり信頼性の高いエネルギー源となります。流速に対する地形の影響が大きく、海峡や水道等流路の幅が狭い地点では流速が速くなります。なお、潮の干満差の位置エネルギーを使った発電は 「潮汐力発電」 と定義され、潮流発電とは区別されます。
(文献 [2] より引用、一部改編)
<参考>
佐賀大学 海洋エネルギー研究センター「潮流発電」 https://www.ioes.saga-u.ac.jp/jp/ocean_energy/about_wave_0
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参考文献:
[1] 資源エネルギー庁 「なっとく! 再生可能エネルギー」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html
[2] NEDO再生可能エネルギー白書 https://www.nedo.go.jp/content/100544816.pdf
[3] 日本地熱協会 地熱発電に関する情報 https://www.chinetsukyokai.com/information/
[4] 資源エネルギー庁 あったかエコ 太陽熱 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/system/
[5] 原子力・エネルギー図面集 CO2冷媒ヒートポンプのしくみ https://www.ene100.jp/zumen/3-1-7
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)