質問番号 2020-0058 で、「電気防食の原理と方法」について説明して頂きました。電気防食について、さらに理解を深めるために、電気防食方式の種類を含め「電気防食方式」についてもう少し具体的に説明して下さい。
電気防食方式は、「流電陽極方式」と「外部電源方式」に大別されます。港湾鋼構造物では、流電陽極方式が主に適用されます。地中埋設物では、小規模防食対象物では流電陽極方式、大規模防食対象物では外部電源方式が効率的です。陸上施設は、施設の構造等によって電気防食方式が選定されます。一般的には、施工性や施工費、維持費等のトータル判断によって電気防食方式が選定されます。
【流電陽極方式】
防食対象物よりもマイナス側の電位を示す金属(イオン化傾向が大きい金属)を陽極(アノード)として電気的に接続し、両金属の電位差を起電力として防食電流を供給する方法です。(図1参照)
流電陽極方式で適用される陽極は、アルミニウム合金陽極、亜鉛合金陽極、マグネシウム合金陽極が一般的です。陽極の選定は、概ね環境抵抗に依存します。高抵抗環境(土壌等)ではマグネシウム合金陽極が適用されることが多く、陽極の接地抵抗低減および安定した陽極性能を確保するために、陽極の周囲にバックフィルを充填します。防食対象に代わって陽極が腐食することから,犠牲陽極方式とも言われます。
【外部電源方式】
直流電源を用いて電極から防食対象に防食電流を供給する方式です。直流電源を必要としますが、大きな電圧を印加(最大60V)することで大電流を通電することが可能です。そのため、長期間の大電流通電に耐えうるように、耐久性の電極が適用されます。(図2参照)
適用される電極の種類としては、金属酸化物被覆(MMO)電極や白金めっきチタン電極、高珪素鋳鉄電極等が挙げられます。交流電源を直流に変換する直流電源装置のプラス側に電極を、マイナス側に防食対象を接続して防食電流を通電することで腐食を抑制します。
表1に流電陽極方式と外部電源方式の比較についてまとめました。
詳細は,弊社HPのプレゼン資料「腐食と電気防食」を御参照下さい。
URL:http://www.nakabohtec.co.jp/presentation/pdf/presentation01.pdf
(株式会社ナカボーテック 久野記)