港湾鋼構造物に対する防食について、港湾鋼構造物の腐食の特徴、防食方式と構造(被覆防食と誘電陽極方式)および防食の設計・施工に関する関連図書等について教えて下さい。
防食対象としては、鋼矢板、鋼管矢板、鋼管杭等の鋼材です。港湾鋼構造物の深度方向における腐食プロフィールは 図1 のようになります。最も腐食が激しい箇所は飛沫帯となります。常時濡れた環境にさらされることで、酸素が十分に供給されるためです。次に腐食が激しい箇所は干満帯の直下となり、干満帯と水中での酸素濃淡電池(マクロセル)による腐食が生じます。
一般的には 図2 のように、海上大気中~L.W.L-1.0mまでは被覆防食を施し、M.L.W.L.以深は電気防食が適用されます。基本的には流電陽極方式による電気防食となり、海水のような低抵抗率環境において適用される陽極は、アルミニウム合金陽極となります。
防食の設計・施工に関する関連図書として、以下のような図書があります。
- 港湾の施設の技術上の基準・同解説(2007年) 監修:国土交通省港湾局、発行:(公社)日本港湾協
- 港湾工事共通仕様書(2021年) 監修:国土交通省港湾局、発行:(公社)日本港湾協会
- 港湾鋼構造物 防食・補修マニュアル(2009年) 発行:(一財)沿岸技術研究センター
- 港湾鋼構造物 新しい防食工法・補修工法・維持管理実務ハンドブック 2013年度版 発行:防食・補修工法研究会
被覆防食は、腐食因子である水や酸素を物理的に遮断する方法です。(図3参照)
粘着性、撥水性、電気絶縁性等に優れたペトロラタム系防食材を防食層とし、柔軟な防食層を保護する保護カバーを組み合わせたシステムで、期待耐用年数は30年程度となります。大気中・水中を問わず施工が可能で、柔軟性があるペトロラタム系防食材は、対象物の形状を問わず被覆可能です。機械的強度に優れた保護カバーでペトロラタム系防食材を保護することで長期に亘って良好な防食状態を維持できます。
電気防食は、腐食因子である酸素を防食電流によって還元(消費)する方法です。(図4参照)
環境抵抗が低い海水の場合には、陽極1個当たりの防食可能な範囲が広くなります。陽極は、水中溶接にて直接防食対象に取り付けます。防食評価方法は、海水塩化銀電極にて防食対象の電位を測定して、-780mVよりマイナスの電位であれば防食状態にあると評価します。
弊社HPのプレゼン資料「海洋構造物の防食」を御参照下さい。
URL:http://www.nakabohtec.co.jp/presentation/pdf/presentation02.pdf
(株式会社ナカボーテック 久野記)