地中埋設物に対する防食について、地中埋設物の腐食の特徴、防食方式(誘電陽極方式、外部電源方式、選択排流法)および防食の設計・施工に関する関連図書等について教えて下さい。
防食対象としては、ガス管、水道管のようなパイプラインが主で、状況に応じて鋼製地下タンクや構造物等を支持する鋼製基礎杭(土中部)等も含まれます。
土壌中の腐食形態は、図1 のように、環境の不均一性に起因するマクロセル腐食(通気差腐食やC/Sマクロセル腐食等)や、図2 のように、直流電気鉄道からの漏れ電流に起因する電食が特徴的です。(2020-0070『腐食の種類と分類』参照)
土壌中の防食対象の場合、塗覆装と電気防食を併用した防食措置が施されます。電気防食方式は、流電陽極方式および外部電源方式のいずれも適用され、経済性や設備の重要性等を考慮して選定されます。流電陽極方式の場合、土壌のような高抵抗環境において適用される陽極は、マグネシウム合金陽極となります。さらに、陽極接地抵抗の低減および安定した陽極性能を確保するために、陽極の周囲にバックフィルを充填します。
防食の設計・施工に関する関連図書として、以下のような図書がありますが、事業者毎の独自の管理基準等も多くあります(特にガス事業者)。
- 水道用塗覆装鋼管の電気防食指針(WSP 050-2017) 発行:日本水道鋼管協会
- マクロセル腐食指針(WSP 045-2008) 発行:日本水道鋼管協会
- 電気設備技術基準・解釈 発行:経済産業省
パイプラインに流電陽極方式(図3参照)を適用する場合、陽極個数が多く、分散配置させるため、新設工事時に併せて施工することで経済的な施工が可能となります。一方で更新工事を行う場合には、陽極設置のための掘削箇所が多くなるため、施工性。経済性共に不利となります。
外部電源方式(図4参照)は、他埋設金属構造物への干渉を防止するため、ボーリング等によって地中深くに電極を設置する方法が一般的です。ボーリング工事を伴うため、施工費は高価となるものの、出力調整が可能なため効率的な防食効果が期待できます。また、出力電流が大きいため信頼性の高い防食設備となります。
防食評価方法は、一般的に飽和硫酸銅電極にて防食対象の電位を測定して、-850mVよりマイナスの電位であれば防食状態にあると評価します。
地中埋設物の腐食で特徴的なのが電食です。電食防止対策に特化した方法が選択排流法になります。選択排流法は,図5 のように選択排流器を介してレールとパイプラインを接続します。パイプラインに流入した漏れ電流を強制的にレールに帰流させることで電食を防止します。レールとパイプラインを直接ケーブル等で接続すると、レールからパイプラインに電流が流れて遠方点で電流が流出して電食を生じます。これを防止するために、選択排流器内にはシリコンダイオードが組み込まれており、レールからパイプラインの方向へは電流が流れない仕組みになっています。なお、選択排流法は、漏れ電流をレールに戻す回路を形成させるシステムであり、防食するための装置ではないことに注意が必要です。選択排流法の他に強制排流法があり、レールを電極として電気防食を行いつつ、選択排流機能も有している方式となりますが、近年での新規設置はほとんどないため本書での詳細説明は割愛します。
詳細は,弊社HPのプレゼン資料「地中埋設物の防食」を御参照下さい。
URL:http://www.nakabohtec.co.jp/presentation/pdf/presentation03.pdf
(株式会社ナカボーテック 久野記)