太陽光発電についての定義、長所と短所などについて教えて下さい。太陽光発電設備としてのシステム構成(① 太陽電池 ② 発電電力(直流)を交流電力に変換するインバータ(パワーコンディショナ) ③ 必要に応じて、エネルギー貯蔵のために蓄電池も組合せて構成)、国内および海外での利用状況 (発電量など),および今後の動向などについても紹介して下さい。
1. 太陽光発電の長所と短所
太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換する発電方法です [1]。
太陽光発電は,シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し,太陽の光エネルギーを太陽電池(半導体素子)により直接電気に変換する発電方法です[1]。
長所として,エネルギー源が太陽光であるため,基本的には設置す 地域に制限がなく導入しやすいシステムであること,建物の屋根や壁などの未利用スペースに設置できるため,新たに用地を用意する必要がないなどがあります。このため,蓄電池と組み合わせることによって,送電設備のない遠隔地(山岳部,農地など)の電源や,災害時などには非常用電源として使うとして活用することができます。
短所として,気候条件により発電出力が左右されることが挙げられます。
その他に,太陽エネルギーを利用した発電方法として,「太陽熱発電」があります。これは,太陽熱によって生成した蒸気を用いて発電するシステムです。集光することによって,エネルギー密度が低い太陽エネルギーでも高温を得ることが可能となります [2]。太陽熱発電は,太陽光を一旦,熱に変えて発電するため,熱慣性や蒸気タービンなどによる機械的な慣性力によって発電量が平滑化される点が挙げられます。
2. 太陽光発電システムの構成
太陽電池は,直流で発電するので,これを交流の電力系統に連系するためには,図1 のようなシステムが必要です。太陽電池からの直流配線を一本にまとめ,パワーコンディショナに送るための装置が「接続箱」です。
そして,太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換する装置が,「パワーコンディショナ」です。パワーコンディショナには,太陽電池の出力を最大化する最大電力点追従制御(Maximum Power Point Tracking control/MPPT制御)や,電力系統の事故時にはパワーコンディショナの出力を遮断して事故を防ぐ「系統連系保護機能」などが備えられています。
3. 国内および海外での利用状況
文献 [4] によれば,日本における太陽光発電システムの導入量は,2020年末の累積で71GWに達しています。太陽電池モジュールの国内出荷量は,2009年11月に太陽光発電の余剰電力買取制度が開始されたことなどを受けて,2009年度から増加し始めています。また,2012年に開始した固定価格買取制度の効果により,非住宅分野での太陽光発電システムの導入が急拡大しました [4]。
また,2019年の全世界での太陽光発電システムの累積導入量は760 GW(760,400MW)で,日本は中国,アメリカに次ぐ世界第3位の累積導入量となっています [4]。
導入目標としては,2015年7月に公表された長期エネルギー需給見通しにおいて,2030年に住宅用・非住宅用合わせて64GWが示されていますが,2050年カーボンニュートラルの実現に向けて,さらなる導入量の拡大が検討されています [5]。
(参考文献)
[1] 資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/solar/index.html
[2] NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
[3] 太陽光発電協会 太陽光発電のしくみ http://www.jpea.gr.jp/knowledge/mechanism/index.html
[4] 一般社団法人 日本電機工業会 太陽光発電の導入状況 https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/solar/donyujokyo.html
[5] 一般社団法人 太陽光発電協会 2050年カーボンニュートラル実現に向けてhttp://www.jpea.gr.jp/pdf/t210325.pdf
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)