高圧コンビネーションスターター盤(真空電磁接触器VCSと電力ヒューズの組合せ)での過電流継電器OCRの瞬時要素の設定について、標準的な真空電磁接触器VCSの短絡遮断電流は4kA程度のため、高圧コンビネーションスターター盤の場合は、過電流継電器OCRの瞬時要素を取り入れないように設計してますが、瞬時要素を提案してくるメーカーも有ります。皆さんどうしているのでしょうか。
高圧真空電磁接触器VCSは、回路の短絡保護のため電力ヒューズとの保護協調が要求されています。また、高圧真空電磁接触器は通過電流(下図の協調図の場合短絡電流20kA)による熱的ストレスや電磁反発力による機械的ストレスに耐えることが要求されています。 「JEM 1167(2007)高圧交流電磁接触器」 をご参照下さい。
上図の協調図の場合、短絡事故が生じると高圧コンビネーションスターター(VCSと電力ヒューズの組合せ)に短絡電流20kAが流れます。この時、VCSの過電流継電器OCRの瞬時要素が活きていると、電力ヒューズが溶断する前に、VCSが短絡電流20kAを遮断してしまう恐れがあり、VCSの接点溶着などの事故に至る恐れがあります。よって私は、VCSの過電流継電器OCRの瞬時要素はオフとし、限時要素だけをオンにするのが良いと思います。
富士時報 Vol.72 No.7 1999 「新形高圧真空電磁接触器 VMC・HNシリーズ」 に、定格電流 M200A高圧限流ヒューズを搭載して短絡電流実効値40 kA(短絡力 率 0.1)の回路で短絡遮断試験を実施した試験結果が記載されています。下記のURLをご参照下さい。
https://www.fujielectric.co.jp/company/jihou_archives/pdf/72-07/FEJ-72-07-387-1999.pdf
高圧コンビネーションスターター盤でOCRの瞬時要素を設定しない根拠として、昔、あるメーカーから下記のようなアドバイスを受けたことがあります。ご参考にして下さい。
- OCR瞬時要素とパワーヒューズでは動作時間の領域が狭く、保護協調上は協調が取れていたとしても、実際に短絡が発生した時にOCR瞬時要素とパワーヒューズのどちらが先に動作するか不明であり、VCSが溶着し波及事故の可能性がある。
- 過電流継電器OCRの瞬時要素が設定されていた高圧コンビネーションスターター盤で、短絡事故発生後の調査で高圧コンビネーションスターター盤の点検を実施した結果、電力ヒューズの溶断とVCS接点が溶着していた経験がある。
皆さまのご経験などをお知らせ下さい。
(エンジニアリング会社の方からの回答です)