風力発電についての定義,長所と短所などについて教えて下さい。 風力発電設備としてのシステム構成,国内および海外での利用状況(発電量など),いま話題の洋上風力発電を含む今後の動向などについても紹介して下さい。
1. 風力発電の長所と短所
風力発電は,風の力で風車を回し,その機械的エネルギーを発電機によって電気エネルギーに変換するものです。風力発電は,風の運動エネルギーの最大30~40%程度を電気エネルギーに変換することができるので,比較的効率の高いことが特徴です。一方で,風の強さが不規則に変動し,それに伴い発電量が不規則に変動することや,無風状態では発電ができないなどが欠点となっています。また,国土が狭い日本では,年間を通じて風の強い場所が限られ,導入に適した適地が限られてしまうことや,ブレード (羽) の回転による光の変化や騒音のため,住宅地域近くに設置できないなど,立地の制約もあります [1]。
< 長所 >
1.陸上と洋上で発電が可能なエネルギー源:日本では陸上風力の設置が進んでいます。今後,大きな導入ポテンシャルを持つ洋上風力発電も検討・計画されています。
2.経済性を確保できる可能性のあるエネルギー源:風力発電は,大規模に発電が可能で,経済性も確保できる可能性があります。
3.変換効率が良い:風力エネルギーは高効率で電気エネルギーに変換できます。
4.夜間も稼働:太陽光発電と異なり,夜間でも発電することができます。
< 短所 >
系統制約,環境アセスメントの迅速化,地元調整等の開発段階での高い調整コストなどが課題となっています。
2. 風力発電システムの構成
風車の種類は,文献 [2] に示されているように,回転軸の方向によって,水平軸風車と垂直軸風車に大別することができます。また,作動原理によって,揚力形風車と抗力形風車に大別することができます。売電事業を目的に設置される中型以上の風車は,プロペラ式が大部分を占めています [2]。
風力発電システムは,風力エネルギーを機械的動力に変換するロータ系(ブレード,ロータ軸,ハブ),ロータから発電機へ動力を伝える伝達系(動力伝達軸,増速機),発電機等の電気系(発電機,電力変換装置,変圧器,系統連系保護装置),システムの運転・制御を司る運転・制御系(出力制御,ヨー制御,ブレーキ装置,風向・風速計,運転監視装置)から構成されます [2]。
3. 国内および海外での利用状況
日本の風力発電導入量について,文献 [3] によれば,2020年時点では,443.9万kWとなっています。一方,文献 [4] によれば,2020年時点における世界の導入量は,約68,900万kWになっており,日本の導入量は,その約0.6%です。
4. 洋上風力を含む今後の動向
2020年12月に出された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では,洋上風力発電は,再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札とされており,2040年には,全世界で562GW,120兆円超の投資が見込まれる成長産業とされています。日本においては,2030年までに1,000万kW,2040年までに浮体式も含む3,000万kW~4,500万kWの案件を形成するとされています [5]。
そのため,海域の利用や港湾の整備や系統の整備などの課題があります。とくに,洋上風力の適地から大需要地に運んでくる送電網が重要であるため,直流送電について,技術的課題やコストを含め,導入に向けた具体的検討を開始するとされています。
なお,文献 [6] によると陸上風力発電の導入ポテンシャルは,約2.8億kW,洋上風力発電の導入ポテンシャルは,約11.2億kWと推計されています。
(参考文献)
[1] 資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/wind/index.html
[2] NEDO 風力発電導入ガイドブック(2008年2月改訂第9版) https://www.nedo.go.jp/content/100079735.pdf
[3] 一般社団法人 日本風力発電協会:「日本の風力発電導入量」 http://jwpa.jp/pdf/dounyuujisseki2020graph.pdf
[4] 総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第28回)資料 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/028_03_00.pdf
[5] 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012.html
[6] 令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報の整備公開等に関する委託業務報告書 http://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/report/r01.html
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)