JIS Z 9290-4:2009 は,JIS Z 9290-3:2014 の雷保護システムに対して,建築物内部の電気・電子機器の保護を対象としている。雷の各種パラメータ,雷保護ゾーン(LPZ:Lightning Protection Zone),等電位ボンディング,電磁遮蔽,SPD設置などの概念が導入されている。
1. 雷保護ゾーン
JIS Z 9290-4 では,雷電磁インパルス(LEMP:Lightning Electro Magnetic Pulse)によって生じる電磁界により,建物内部の設備や電気・電子機器に障害が発生しないように,LEMP の強さの異なるゾーン(LPZ)を定め,内部に異常電圧が発生しないよう,金属物や電力線,通信線,水道管などをその境界部分で確実に統合接地にボンディングし,等電位化を図ることとしている。
なお,LEMP とは,電磁界に限らず,雷放電によって生じる電気的なパルス,電圧,電流のすべてを指す。JIS では建物の内と外の区分(雷保護ゾーン:LPZ 0,LPZ1)以外は明確には規定していないが,運用上は建物内にある電気室や各フロア間,各部屋に設置された電気機器などが該当する。電力線や通信線は直接ボンディングできないため,SPD を介してボンディングを行う。雷保護ゾーンと具体的な設備例を 表1 に示す。
2. 耐インパルスカテゴリーと耐電圧
JIS C 60364-4-44 では,電源系統におけるインパルス耐電圧を 表2 のように定めている。
3. 統合接地
ビルなどの建物の接地は,従来から「避雷針接地」,「A種接地」,「B種接地」,「D種接地」,「クリーン接地(弱電接地)」,「ELB接地」など多くの接地極を設け,個別に単独接地される場合が非常に多かった。JISではこれらをすべて統合した1点接地(統合接地)とすることで,等電位化を図っている。
詳細は「SPD・避雷器と耐雷トランスを用いた雷保護」オーム社(2015−6)に記載されているのでご参照下さい。
(中部大学 教授 山本和男 記)