バイオマス発電についての定義,長所と短所などについて教えて下さい。バイオマス発電設備としてのシステム構成,国内および海外での利用状況 (発電量など),およびバイオマス発電の今後の可能性などについても紹介して下さい。
1. バイオマス発電の定義
バイオマスとは,動植物などから生まれた生物資源の総称です [1]。バイオマス資源は,廃棄物系資源,未利用系資源,生産系資源の3つに大別され,その用途には,エネルギー利用の他,飼料,肥料,建材などの材料など,さまざまなものがあります [2]。バイオマス発電では,この生物資源を「直接燃焼」したり,「ガス化」したりするなどして発電します。
2. バイオマス発電の長所と短所
バイオマス発電の特長として,まず,「地球温暖化対策」が挙げられます。光合成によりCO2を吸収して成長するバイオマス資源を燃料とした発電は「京都議定書」における取扱上,CO2を排出しないものとされています。また,未活用の廃棄物を燃料とするバイオマス発電は,廃棄物の再利用や減少につながり,循環型社会構築に大きく寄与します [2]。
一方,課題点として,資源が広い地域に分散しているため,収集・運搬・管理にコストがかかる小規模分散型の設備になりがちということがあります [2]。
3. バイオマス発電の長所と短所
バイオマスエネルギーには,木質燃料,バイオ燃料(バイオエタノール),バイオガスなどさまざまな種類があります。
(1) 直接燃焼による発電 [2]
原料となるバイオマスをボイラで燃焼し,得られる水蒸気を蒸気タービンに送り,電力を得るものです。バイオマスと石炭を同時に燃焼させるバイオマス混焼方式とバイオマスを専用のボイラで燃焼させるバイオマス専焼方式があります。
バイオマス混焼方式には,石炭とバイオマスを微粉炭機に一緒に入れて,混合粉砕し,ボイラで燃焼する混合粉砕方式と,バイオマス専用の粉砕設備を造設する専用粉砕方式があります。混合粉砕方式は,既存の火力発電設備の改造範囲が少なく,蒸気タービンや発電機などの設備もそのまま利用できるというメリットがありますが,木質バイオマスの粉砕性に課題があり,混焼率は,一般に1~3%となっています。専用粉砕方式は,混焼率を高くすることが可能ですが,既存の火力発電設備に造設スペースをボイラ付近に確保できることが前提となり,改造工事も多くなりますので,コスト面の課題もあります。
バイオマス専焼方式は,原料となるバイオマスをボイラに投入し,得られた水蒸気で蒸気タービンを回して発電するものです。混焼方式を比較すると熱効率は低くなります。また,エネルギー効率を高めるためには,バイオマスを乾燥させる必要がありますが,乾燥のための大きなエネルギーが必要となります。
(2) ガス化による発電 [2]
原料となる木質系バイオマスなどを前処理した後,ガス化炉に投入してガス化し,得られたガスを用いて発電するものです。発生したガスのうち,H2,CO,CH4などの可燃性ガスを用いて,蒸気タービン,ガスエンジン,ガスタービン,燃料電池により発電を行います。発電と同時に熱も発生することから,熱利用を合わせて行う事例も多くあります。
4. 国内および海外での利用状況 (発電量など)
参考資料 [3] のFIT・バイオマス発電所新規導入容量の推移のグラフによれば,2021年6月時点の累積容量は,約300万kWとなっています。また,参考資料 [3] では,FIT制度における木質バイオマス発電所一覧などを参照することができます。
2020年6月にREN21が発表した ”Renewables 2020 Global Status Report” では,世界の再生可能エネルギーの導入状況をまとめています。再生可能エネルギーの累積容量全体 (2,588GW) でみるとバイオマス発電が8%となっています [4]。
5. バイオマス発電の今後の可能性
第6次エネルギー基本計画では,「バイオマス発電は,災害時のレジリエンスの向上,地域産業の活性化を通じた経済・雇用への波及効果が大きいなど,地域分散型,地産地消型のエネルギー源として多様な価値を有するエネルギー源である。一方で,他の再生可能エネルギーと異なり燃料が必要であり,発電コストの大半を燃料費が占めているという特徴がある。このため,バイオマス発電の導入拡大に向けては,限りあるバイオマス燃料の安定調達と持続可能性を確保しつつ,燃料費の低減を進めることが課題となる。こうした課題を克服し,地域での農林業等と合わせた多面的な推進を目指していくことが期待される。」 [5] とあります。これを踏まえて,2030年度では,8.0GW,470億kWhの導入見込量として算定されています [6]。
<参考文献>
[1] なっとく!再生可能エネルギー:資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html
[2] NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第2版 https://www.nedo.go.jp/content/100544819.pdf
[3] 日本木質バイオマスエネルギー協会 https://www.jwba.or.jp/database/renewable-energy/
[4] 海外の再エネ事情:一般財団法人 新エネルギー財団 https://www.nef.or.jp/keyword/ka/articles_ka_06_02.html [5] 第6次エネルギー基本計画 https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005-1.pdf
[6] 2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料) https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005-3.pdf
(名古屋工業大学 准教授 青木 睦 記)