電気鉄道では、電車線の電気的な区分装置をセクションといい、通常時の電車線の区分や、保全作業や事故時の電車線の区分にも用いられます。
直流電気鉄道は直流1500V方式が主で、図1に示すように、き電用変電所では特別高圧の三相交流を受電し、変圧器および整流器で、標準電圧1500Vの直流に変換して、き電用高速度遮断器で方面別にき電(給電)しています。このため、変電所前はエアセクションで電気的に区分しています。変電所間隔は都市部が5km程度、都市近郊や亜幹線では10km程度です。図2は変電所前のエアセクションとセクションを通過する電車です。
直流変電所のき電側は電気的には同じ相であり、電車がエアセクションに停車して、パンタグラフがセクションを短絡しても、電位差が小さく、そしてエアセクションに流れる他の車両負荷電流が小さいと、アークの発生はない筈です。しかし、変電所が線路から離れていたり、エアセクションの位置が変電所から偏っていると、エアセクションに電位差が生じて、図3に示すように、パンタグラフからアークが発生したり、ほかの電車への電流経路となり、電車が停止するとトロリ線が溶断することがあります。
このため、エアセクションでは電車は停止しないようにするとともに、溶断の可能性のある箇所では、電車が停車してもトロリ線が溶断しないように、トロリ線の強化、放熱量を大きくする、列車停止検知とセクションの短絡などが行われています。
図4はセクション標であり、運転士にエアセクションであることを知らせて、電車は停止しない(×)ようにすることを示しています。 図5は放熱量を大きくするため、アルミパイプにトロリ線を沿わせたTC形エアセクションです。
万一、エアセクションで列車が停止した場合は 『① いったん、全パンタグラフを降下し、エアセクション外のパンタグラフを上昇して列車をセクションの外へ移動する、② セクションにのみパンタグラフがある場合は、低いノッチ(小さい電流)で、セクション外へ移動する』などが行われます。
(持永芳文 記)