低圧系統の接地線サイズの選定と、MCCB(Molded Case Circuit Breaker)の選定(定格遮断電流値および動作時間)について検討するために、下記の手順で検討を進めます。
(1) 中性点接地方式(直接接地方式、抵抗接地方式、非接地方式)について検討する(確認する)。
(2) 該当する中性点接地方式を適用して、事故電流(3相短絡電流、線間短絡電流、2線地絡電流、1線地絡電流)の値を求める 。
(3) これらの値を求めた上で、低圧系統の接地線の太さの選定と、MCCBの選定について検討する。
1. 低圧系統の接地線サイズの選定
(1) 1線地絡電流あるいは2線地絡電流計算結果の大きい方の地絡電流値とMCCBの動作時間との関係から接地線が溶断しない(許容温度に達しない)サイズを選定する。
(2) 計算で求めたサイズが、電気設備技術基準等の基準や法規で規定されたサイズ以下である場合は、基準や法規で規定されたサイズを適用する。接地線のサイズにつ いては、電気設備技術基準の解釈第20条をご参照下さい。
2. MCBの選定(定格遮断電流値および動作時間)
(1) MCBの定格遮断電流値は、計算で求めた3相短絡電流あるいは線間短絡電流計算結果の大きい方の値を遮断できる値とする。
(2) 中性点接地方式が抵抗接地方式あるいは非接地方式の場合、1線地絡電流あるいは2線地絡電流の値はかなり小さい値であり、MCCBでは検出できない。このような場合は、漏電遮断器 (ELCB : Earth Leakage Circuit Breaker) を用いるか、あるいは漏電検出器 (ELR : Earth Leakage Relay) を併用して保護する。(See Note)
(3) 中性点接地方式が直接接地方式の場合は、1線地絡電流および2線地絡電流の値はかなり大きな値(3相短絡電流値の約70~80%くらい)になるので、MCCB が動作するが動作時間が長くなり、人命の保護ができない恐れがある。このような場合は、上記の (2) と同様、漏電検出器 (ELR : Earth Leakage Relay) を併用して保護する。(See Note)
(Note)
この場合、事故電流を MCCB で遮断する場合は問題ないが、MCC (Motor Control Center) 等 で、ELR で地絡電流を検出して電磁開閉器で遮断する場合、地絡電流が電磁開閉器の遮断能力を超えることがあります。石化系企業では、中性点直接接地ではなく、高抵抗接地として地絡電流を抑制して対応していることがあります。
このような検討を行う場合、中性点接地方式を考慮して事故電流(3相短絡電流、線間短絡電流、2線地絡電流、1線地絡電流)の値を求め、適切な保護方式を選定し適用することが重要である。ご参考までに、電力系統解析ソフトウェア etap [1] を用いると、中性点接地方式(直接接地方式、抵抗接地方式、非接地方式)を設定して、3相短絡電流、線間短絡電流、2線地絡電流、1線地絡電流計算を同時に行うことができる。
(参考文献)
[1] etap (電力系統解析ソフトウェア) 株式会社エルテクス設計 https://www.eltechs.co.jp/
(エンジニアリング会社関連の方からのご回答です)