66kV系統で遮断容量10~27kA、変圧器中性点高抵抗接地600Aの系統がある。 このような系統における変圧器金属製外箱の『A種接地工事』の接地抵抗はどのような数値を目標に設計すれば良いでしょうか?
接地の種類にはその目的によって、保安用接地、機能用接地、雷保護用接地の3種類があります。
1. 保安用接地の種類と用途
保安用接地の種類は用途によって、下記の4つの種別(A種、B種、C種、D種)に分けられます。電気設備技術基準の解釈第19条をご参照下さい。
A種: 10 [Ω] 以下
高圧用の電気機械器具の金属製外箱、避雷器などに施す接地工事。高圧機器による感電等の災害防止用の接地工事。
B種: 150/I [Ω] 以下(注1) ここで、I は地絡電流
高圧と低圧を変成する変圧器の低圧側の1線に施す接地工事。
C種: 10 [Ω] 以下(注2)
300Vを超える低圧電気機械器具の金属製外箱や金属管などに施す接地工事。
D種: 100 [Ω] 以下(注2)
300V以下の低圧電気機械器具や金属製外箱および金属管などに施す接地工事。
(注1): 1秒を超え2秒以内に自動的に高圧電路を遮断する装置を設置する場合は300/I[Ω]以下、1秒以内の場合は600/I[Ω]以下
(注2): 低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に電路を自動的に遮断する装置を施設するときは500[Ω]以下
2. 高圧用の電気機械器具の金属製外箱の接地
ご質問は、高圧用の電気機械器具の金属製外箱に施す接地工事 についてであり、電気機械器具の金属製外箱は、電気設備技術基準に従い、A種接地の規定抵抗値である10 [Ω] 以下にしなければなりません。
しかし、A種接地工事の規定抵抗値を満足しても運転員および作業員に対する「感電」の問題は解決されたとは言えません。地絡電流の値によっては、接地電位 (GPR: Grounding Potential Rise) が上昇し、接触電圧や歩幅電圧が大きくなり、感電による人身事故が生じる恐れがあります。
ここで、接触電圧 (Touch Potential) とは、接地を施した構造物に事故電流が流れた時、接地極近傍の電位が上昇します。この時、人畜が構造物に接触した際に生じる手と足の間の電位差です。IEEE(米国電気電子学会)によれば、「接触電圧は構造物と大地面の距離1mの電位差」と定義されています。
歩幅電圧 (Step Potential) とは、接触電圧と同様に接地極近傍に電位が生じた時、人畜の両足間に生じる電位差のことです。IEEE(米国電気電子学会)によれば、「歩幅電圧は接地極付近の大地面の2点間(両足)の距離1mの電位差」と定義されています。
接地電位、接触電圧、歩幅電圧は、接地抵抗地、地絡電流値、事故を解放するまでの時間によって計算することができます。 IEEE80 では、運転員および作業員の体重(50kgあるいは70kg)によって接触電圧および歩幅電圧の許容値が定められており、図1に示す値になります。
接地電位 (GPR) を求め、接触電圧および歩幅電圧を計算には、地絡電流計算、接地抵抗計算(メッシュ接地、接地導体、接地方棒の配置やサイズ、埋め込み深さなど土壌の状態を考慮した計算)、保護協調と保護装置の遮断時間の検討を一体とした検討が必要です。ご参考までに、電力系統解析ソフトウェア etap [5] を用いることにより、これらの統合的な検討を行い、接触電圧および歩幅電圧の許容値との比較検証を行うこともできます。
(参考文献)
[1] Safety Limit Calculations to IEEE and IEC Standards : Electro technik
Safety Limit Calculations to IEEE and IEC Standards – ELEK Software
[2] GROUND POTENTIAL RISE, STEP AND TOUCH POTENTIAL
Ground Potential Rise, Step and Touch Potential – Voltage Disturbance (voltage-disturbance.com)
[3] 接地設計 : 日本地工株式会社
https://www.chiko.co.jp/setti/faq/004-4.html
[4] 接地種別 | A種 B種 C種 D種 : 株式会社 サンコーシヤ
https://www.sankosha.co.jp/earthing-systems/earthing-systems-type-in-japan/
[5] etap (電力系統解析ソフトウェア) 株式会社エルテクス設計
(エンジニアリング会社関連の方からのご回答です)