油入変圧器は、冷却方法によって自冷式と風冷式に分けられます。① 自冷式は、油の対流により放熱する方式なので、構造が簡易で運用も容易であり、主に小容量の変圧器に、② 風冷式は、換気ファンを回して強制的に冷却する方式なので、冷却能力は高くなりますが構造が複雑になりメンテナンスの手間もかかるため、比較的大容量の変圧器に採用されます。
変圧器の巻線および絶縁油の温度上昇限度は、JEC 2200-2017「変圧器」で、巻線は抵抗法で 55Kまたは60K、絶縁油は温度計法で 50Kまたは55K と規定されています。詳細は、JEC 2200-2017 をご参照下さい。ここで、温度上昇とは、抵抗法又は温度計法による測定温度と周囲温度との差のことで、単位K (ケルビン)で表します。すなわち、「50Kは温度上昇50℃」を表します。また、JIS C 4304-2013 「配電盤用6㎸油入変圧器」によれば、温度上昇限度は、① 50K(本体タンクの油が直接外気と接触する場合)、② 55K(本体タンクの油が直接外気と接触しない場合)と定められています。
絶縁油の温度上昇限度が50Kの場合、許容最高周囲温度は 40℃なので油温度が 90℃ までは問題ありません。しかし、油温が 90℃ に近い場合は注意が必要です。変圧器の油温度上昇の原因として、過負荷や絶縁油の劣化、周囲温度の上昇 などが考えられますので、先ず、これらの原因調査と対応策の検討をして下さい。変圧器の温度が異常に上昇すると、鉄心や巻線が損傷するほか、絶縁紙が過熱によって劣化するなど絶縁性能の劣化が進行します。油入変圧器の場合、本体に警報接点付のダイヤル温度計を付属し、絶縁油の温度を計測するのが基本です。
風冷式の場合は、冷却器のユニットクーラーの目詰まりや、変圧器内部で異常があると油温度が上昇して120℃ 以上の熱油が突沸し、放圧装置(配管)の付近にいると火傷をするする恐れがあります。変圧器温度の異常時には、この付近に近づかないようにして下さい。この対応策等については、質疑応答 2022-0172 (現場とトラブル)油入変圧器のユニットクーラーの冷却能力低下による放圧装置の動作 をご参照下さい。
「JEC仕様変圧器 (JEC-2200-2014) とJIS仕様変圧器 (JISC4304:2013) の違い」については、資料 [1] を、「油入変圧器の温度はどの程度まで大丈夫か」については、資料 [2] をご参照下さい。
(参考資料)
[1] 株式会社ダイヘン : 電力機器Q&A その他 「 JEC仕様変圧器とJIS仕様変圧器の違いについて」 https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/other/q04.html
[2] 株式会社ダイヘン : 電力機器Q&A その他 「油入変圧器の温度はどの程度まで大丈夫?」https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/other/q01.html
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田)