VVVF(入力変圧器あり)へ給電する高圧6kVのVCBフィーダ盤に、8.4kV、5kA の音羽電機製の SA(サージアブソーバ)、GL6SG 型が設置されています。この SA の目的とその選定基準について教えて下さい。
ご質問の中の呼称 SA(サージアブソーバ)は、呼称「避雷器、SARあるいはLAなど」[2] のこととして回答します。
SA(サージアブソーバ)の目的は雷または回路(遮断器)の開閉などに起因する過電圧(雷サージ、開閉サージなど)の波高値がある値を超えた場合、放電により過電圧を制限して、電気機器の絶縁を保護することにあり、ご質問の避雷器もその目的で設置をされているものと考えられます。
6.6kV系統には、一般的に公称放電電流2.5kA [4] の避雷器が選定されることが多いのですが、(参考:JEC-203(1978)の付録「避雷器適用の手引き」[1] など) 、地域性や機器の重要性により、保護の信頼性を高めるべく公称放電電流:5kAや10kAの避雷器を選定されることもあります。ご質問の系統ではこのような観点から、GL-6SG(定格8.4kV、5kA)を選定し実装されていると思われます。
なお、 「公称放電電流」とはその避雷器が繰り返し放電し、自復可能 [4] な雷サージ電流の最大値であり、6.6 kV用の場合は2.5kA、5kA、10kAの3種類があります。
(電機メーカーの方からの回答です)
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補足説明:
以下、事務局の亀田が、普段知りたいと思っていることを整理してみましたのでご参考にして下さい。説明不足等、追加・修正が必要な記述がありましたらお知らせ下さい。
[1] JEC-203(1978)の付録「避雷器適用の手引き」
JEC-203(1978)「避雷器」は、JEC-2374 (2015) 「酸化亜鉛形避雷器」 酸化亜鉛形避雷器[制定]-電気学会 の制定に伴い,以下の 4つの規格と共に2015 年 11 月 26 日をもって廃止になりました。
- JEC-217 (1984) 酸化亜鉛形避雷器
- JEC-2371 (2003) がいし形避雷器
- JEC-2372 (1995) ガス絶縁タンク形避雷器
- JEC-2373 (1998) ガス絶縁タンク形避雷器 (3.3~154kV 系統用)
[2] 「避雷器」についての呼称
Web siteを見ると、さまざまなサイトで、避雷器、SA(サージアブソーバ)、SAR(サージアレスタ)、LA(ライトニングアレスタ)、保安器、サージキラーなどさまざまな呼称での説明があり混乱してしまいます。メーカーによっても呼称が異なるようです。
Wikipediaで「避雷器」を検索すると、『最も強力な雷由来のサージも処理することから、避雷器の名があるが、実際のサージは雷由来のサージよりも、スイッチやモーター、各種電源装置、各種通信装置などに由来するものの方が多く、避雷器はこれらからのサージも適正に処理する必要がある。このことからその正式名称は、IEC(国際電気標準会議)により、サージ防護デバイス (SPD : Surge Protective Device) に統一され、広範なEMI(電磁気妨害)対策用部品としての位置付けがされた。』 とあります。
- 日本では、これまで、高圧用では3kV、6.6kV~500kVまで、低圧用では低圧電源用や各種の通信・信号回路などの強電・弱電用も、すべて「避雷器」と呼んでいます。低圧用や通信・信号用に関しては、「保安器、サージアブソーバ、サージキラー」などということもあります。一方、高圧用の避雷器を保安器、サージアブソーバ、サージキラーということは余り無いようです。
- SPDという呼称は、JIS/IEC規格に準拠した低圧電源用や、通信・信号回路用の避雷器を総称してこう呼びます。つまり昔は「避雷器、保安器、サージアブソーバ、サージキラー」等と呼んでいたいろいろな低圧電源用および通信・信号回路用のサージ対策機器について、JIS/IECに適合した試験をクリアすればそれを「SPD」と呼ぶようになりました。しかし、これは「高圧避雷器」には適用しません。あくまでも「低圧以下」のJIS/IEC規格対応の避雷器に対しての呼称であり、高圧避雷器を「SPD」と呼ぶのは間違いと言えます。
- SA(サージアブソーバ)という呼称は、正確な呼称かよく分かりませんが、昔からよく使われています。
- SAR(サージアレスタの略と思われる)は、重電機器メーカーで、66kV以上の避雷器をこの様に表現しているのをたまに見ます。IEC60099-4が「サージアレスタ」の規格なので、世界市場を考慮したものかも知れません。
- LA(ライトニングアレスタの略と思われる)は、国内では高圧避雷器の単線結線図上の略号として、これが最も一般的と思います。SPDという規定ができる前は、低圧用避雷器も「低圧用LA」と言われていました。
[3] 避雷器の設置位置
避雷器は、一般的に過電圧(雷サージ、開閉サージなど過電圧から保護する電気機器の上流側に設置します避雷器入りの単線結線図については。JIS C 4620(キュービクル高圧受電設備)などの規格等をご参照下さい。
また、下記の Web site「【やさしく解説する電気】受電から制御まで」の中に「受変電の全貌〜単線結線図概要〜」があります。第4)項「避雷器」に、単線結線図と避雷器の接続位置、避雷器の説明が載っていますのでご参考にして下さい。
https://chief-engineer.info/full-picture-of-the-receiving/ #toc6
[4] 公称放電電流
公称放電電流とは、その避雷器が繰り返し自復可能 (規格により、自復性能、復帰性能、現状復帰性のような用語になっている) な雷サージ電流の最大値であり、6.6kV用の場合、2.5kA、5kA、10kAの3種類があります。一般的に、① 6.6kV高圧配電線や高圧受電盤においては、2.5k Aが使われ、② より激雷地域(避雷器の放電電流も大きくなると想定される場所)では、5kAが推奨されてます。③ また、電力会社の発変電所では、鉄塔への落雷やさまざまな開閉サージなどを想定して、10kAの選定が通常です。
また国内と海外では接地系統も違いますが、海外には公称放電電流2.5kAのアレスタはありません。公称放電電流の最低は5kAからになります。
[5] ギャップレスアレスタと直列ギャップ付きアレスタ
避雷器には内部素子の構成により、ギャップレスアレスタ(酸化亜鉛素子のみ)と直列ギャップ付きアレスタ(酸化亜鉛素子+直列ギャップ)の2種類があり、用途・目的により使い分けする場合があります。 タイプ GL-6SGは直列ギャップ付きアレスタです。 なお、下記の JIS C 4608 (2015)「6.6kVキュービクル用高圧避雷器」は、ギャップ付きアレスタについてのみ規定しています。GL-6SG(ギャップ付き)はその意味では一般的な選定と言えると思います。