JICA(独立行政法人国際協力機構)では、資源・エネルギー分野における協力の柱として、① 送配電ネットワークの強化による エネルギー・アクセスの向上 ➁ 再生可能エネルギー(再エネ)導入並びに省エネ促進による 低・脱炭素化 ➂ 鉱物資源国における 持続的な資源管理 を掲げています。これらのJICAの取り組みのうち、ご質問の 再エネ分野の協力内容 についての概要を説明致します。
1. 電源整備(新設・拡充)
これまでに無償資金協力や円借款、また最近では海外投融資スキームを活用した、再エネ電源整備に係る直接的な協力を実施しています。電源としては、太陽光発電や風力発電等の変動性再エネ(VRE)に加え、日本企業が相対的に競争力を有する地熱発電や水力発電等、各国の電源構成、ポテンシャル、経済性等に配慮した電源ポートフォリオを提案しています。近年は、アジア地域を中心に電源整備は民間投資へとシフトする傾向もあり、電源開発のためのマスタープランや再エネロードマップ整備等、技術協力を活用したソフト的な協力が増加する傾向にあります。
2. 系統安定化対策
アジア・大洋州等一部の途上国においては、カーボン・ニュートラル達成に向けて VRE 導入が急速に進められつつあり、常時/非常時における電力系統の需給・系統運用に影響を及ぼす状況が見受けられます。日本国内においても、ゴールデンウィークや秋季の軽負荷時における VRE 大量導入に向けた設備形成・運用面での取り組みが一般送配電事業者により進められており、これら知見を途上国に共有するとともに、途上国における取組みを日本の関係者にフィードバックし、リバース・イノベーション促進を図りたいと考えています。具体的には、VRE 導入拡大のための周波数変動対策、保護協調の見直し等の需給/系統運用技術支援、定置型蓄電池(BESS)や可変速揚水発電の導入、VRE 出力予測技術の導入等が計画/実施されています。
3. 送配電ネットワークの整備
一般的に再エネポテンシャルの有望な地点は、電力の需要地となる都市部から離れた僻地に計画される事が多いですが、途上国では送配電ネットワークが十分に整備されていない事も多く、再エネ電源の円滑な導入の障害となっています。VRE 導入促進のための系統安定化対策、またエネルギー・アクセスの向上にも資するためにも、途上国における送配電ネットワークの整備は、最も重要な協力分野の一つとなっています。
(JICA 国際協力専門員(資源・エネルギー)小川忠之 記)