非接地系統のEVT接地方式の場合の1線地絡電流の計算方法について教えて下さい。 また、地絡電流を抑制するために3次側ブロークンデルタ回路に接続された制限抵抗を大きくした場合、地絡電流と同様に漏洩電流も抑制されると考えて良いでしょうか?
非接地方式の系統でEVT接地している場合の1線地絡電流の計算方法については、下記の図と計算式をご参照下さい。 1線地絡事故が生じると下図のように、制限抵抗 Re による零相抵抗 R0 とケーブルのキャパシタンス C による零相リアクタンス Xc により、式 (1-2) の零相抵抗Ro、式 (1-3) の零相リアクタンスXc、式 (1-5) の零相インピーダンス Z0 の値により、式 (1-7) および (1-8) に示す1線地絡電流 Ig が流れます。(出展 : 電気設備エンジニアリングソフトウェアeDPP のユーザーガイド)
ご質問の中に記載されていますように、制限抵抗Reを大きくすると零相抵抗Roが大きくなり、1線地絡電流Ig を抑制することが出来ます(制限抵抗Reを大きくする => 零相抵抗Roが大きくなる => 零相インピーダンスZoが大きくなる => 零相電流Ioが小さくなる)=> 1線地絡電流Igが小さくなる)。 しかし、漏洩電流はケーブルの大地キャパシタンスCによる充電電流であり、制限抵抗Reを大きくしても抑制されません。 即ち、制限抵抗を大きくした場合、地絡電流は抑制できますが、漏洩電流は抑制できません。
制限抵抗は、地絡電流を流す役目をしています。 EVT 6600/√3 : 110/√3 : 190/3(V) の系統で、完全1線地絡が生じた場合の地絡電流 Ig は、下記のように、制限抵抗25Ωの場合380mA、制限抵抗50Ωの場合190mAとなります。 ここで、 EVT 6600/√3 : 110/√3 : 190/3 (V) より、1次と3次の巻線比は、 6600/√3 : 190/3 = 6600 : 190x√3 = 6600 : 110 となります。
制限抵抗 Re=25(Ω)の時:
3Rn = (Re/3) x n2 より, Rn = (25/3*2) x (6600/110)*2 = 10,000(Ω) ∴ Ig = 6600/√3 / 10,000 = 0.381A => 380mA
制限抵抗 Re=50(Ω)の時:
3Rn = (Re/3) x n2 より, Rn = (50/3*2) x (6600/110)*2 = 20,000 (Ω) ∴ Ig = 6600/√3 / 20,000 = 0.191A => 190mA
このように、制限抵抗を大きくした場合、地絡電流は抑制できます。 しかし、漏洩電流は抑制できません。
上記の試算のように、EVTの制限抵抗の値を大きくすると一線地絡時の地絡電流の大きさ、つまり地絡検出感度が変わります。 同一系統には他の負荷も多く接続されていると思います。 質疑応答2023-0220および0222 のご質問のように、インバータ負荷だけに注目するのではなく、その他の全体の負荷を考慮した検討が必要です。 インバータの漏洩電流対策については、質疑応答2023-0220および0222 の回答をご参考に検討して下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)