下図のような既設の低圧の非接地系統でEVT接地方式の低圧母線に、インバータ駆動の電動機を増設する予定です。 EVTの3次ブロークンデルタ側のVT比は 440/190/3(V)で、51Gや67Gは設けておらず、64Vで警報発信させています。 警報設定は40(V)です。 この系統にインバータ駆動の電動機を増設しても問題ないという評価をしたいのですが、検討すべき事および注意点についてご教示下さい。
Kameda Kazuyuki Answered question
インバータおよび電動機の定格や保護方式など不明の点も多々ありますので、取り組み方の一例として回答させて頂きます。 インバータのメーカーと良く相談して計画を進めて下さい。
- 先ず、現状の設備でこれまでに64Vによる警報発信があったかどうかを確認します。 正常運転中は警報が無く、この母線のいずれかのフィーダで地絡事故があった場合に、64Vによる警報が発信され、事故が生じたフィーダが遮断されるというのが理想的です。
- 上記のように正常な場合、正常運転中の零相電圧の値(上図の Voの値)を確認しておきます。
- 零相電圧計Voが付いていない場合は、この低圧母線系統のケーブルの大地キャパシタンスCによる充電電流を計算してVoの値を把握しておきます。 ケーブルの充電電流は、Ic = 2πfCE (E=V/√3) より求めます。 ここで、f:周波数 (Hz)、C:1回線一相の静電容量 (F)、E:相電圧 (V)、V:線間電圧 (V) です。 フィーダ数が多い場合はExcelで計算すると簡単です。 いま地絡事故は起こっていないので、零相電流は流れておらず、ケーブルの充電電流 Ic だけが流れているので、このIc の値を基に零相電圧を算出する。
- 次に、増設するインバータ駆動の電動機からの漏洩電流をメーカーに確認します。 3項で求めたケーブルの充電電流 (ケーブルからの漏洩電流)と増設するインバータからの漏洩電流を基に、64Vによる警報発信が無いか、この低圧母線の系統において保護装置が動作することが無いかを検討します。 特に、インバータ駆動の場合、インバータのPWMキャリア周波数が高いので注意が必要です。
- 保護装置のご動作など恐れがある場合は、質疑応答2023-0220「インバータ駆動電動機回路の漏れ電流と対策」などを参考に対応策の検討が必要です。
また、質疑応答2023-0221「非接地系統のEVT接地方式による保護」で、「EVT接地方式の低圧系統に設置するインバータ駆動電動機において、EVTの3次巻線の制限抵抗を大きくした場合に、地絡電流と同様に漏れ電流も抑制されるでしょうか?」というご質問がありますが、質疑応答2023-0221で説明していますように、制限抵抗を大きくした場合、地絡電流は抑制できますが、漏洩電流は抑制できません。 質疑応答2023-0220「インバータ駆動電動機回路の漏れ電流と対策」で説明したような方法で漏洩電流を抑制する、漏電遮断器(ELCB)や地絡継電器などの保護装置を選定し設定するなどの対応策が必要です。 本件の検討にあたっては、下記の質疑応答を併せてご参照下さい。
- 2023-0219(現場とトラブル)漏洩電流(漏れ電流)と零相電流
- 2023-0220(現場とトラブル)インバータ駆動電動機回路の漏れ電流と対策
- 2023-0221(現場とトラブル)非接地系統のEVT接地方式による保護
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)
Kameda Kazuyuki Edited answer