質疑応答 2023-0020「インバータ駆動電動機回路の漏洩電流と対策」の中で、給電する電力ケーブル、電動機、インバータ本体のフィルタ等の設備の対地静電容量による充電電流についての説明がありました。 充電電流による保護装置の誤動作やその防止対策についても教えて下さい。
(産業用電気設備関係の方からの質問です)
質疑応答 2023-0020で説明したように、対地静電容量(大地キャパシタンス)を C、インバータのPWMキャリア周波数を f とすると充電電流は I = 2πfCE (E=V/√3) となります。 ここで、f:周波数 (Hz)、C :1回線一相の静電容量 (F)、E :相電圧 (V)、V :線間電圧 (V) です。 充電電流 I は、三相交流電圧がバランスしていれば、例えば三相変圧器の中性点接地線(地絡保護のための機能接地)には殆ど電流が流れませんが、インバータから発生する高周波(高調波)電流により三相交流電圧が歪むことで中性点電流が流れる現象が出てきます。 充電電流は、「① 高周波(高調波)のように周波数 f が高い時 ② 電圧が高い系統の時 ③ ケーブルフィーダが長くて対地静電容量Cが大きい時」に大きくなります。
このようなケースで400V系統の場合は地絡保護 ELCB 誤動作等のトラブルが起き易くなります。 例えば、変圧器中性点地絡検出継電器や、インバータに給電しているフィーダの地絡保護用の ELCB が誤動作したケースがあります。 1フィーダで地絡事故が発生した時、インバータへ給電していた多数の健全フィーダの地絡保護 ELCB が誤動作したケースもあります。 地絡保護 ELCB の誤動作防止対策は、インバータに給電するフィーダケーブルに CVT ケーブル(三相3芯がバランスするトリプレックスケーブル) を採用するだけでなく、配線を出来るだけ短くすること(現場モータの近くにインバータを設置しないこと)等によりトラブルが起きにくくなります。
参考ですが高圧インバータの場合、入力変圧器を多相化して電源側への高調波発生を抑える設計をすること、インバータ~モータ間の CVT ケーブルの金属シースを両端接地することが推奨されています。(両端接地は迷走電流によるトラブル原因になるが、高調波によるトラブル対策を考慮して推奨されています。)
(産業用電気設備関係の方からの回答です)