質疑応答 2023-0026「対地静電容量による充電電流」の中で、高圧インバータの場合、「インバータ~電動機間のCVTケーブルの金属シースについては両端接地が推奨されている」という説明がありました。 両端接地の目的とその影響等について教えて下さい。
(産業用電気設備関係の方からの質問です)
高圧インバータは入力変圧器を多相化したり、パワエレ素子の技術進歩によりサイリスタ(PAM)から IGBT(PWM)になり高調波が少なく性能が良くなっています。 しかし、出力側からモータまでの高圧ケーブルについては両端接地することがメーカーの配線マニュアルに記載されています(推奨されています)。
一般的に両端接地にすると溶接電源、異相地絡等による迷走電流によるトラブルが発生しやすくなります。 これらのトラブル対策として片端接地とする方法、避雷器 LA 等を介して接地する方法等も行われていますが、インバータのメーカーは、両端接地を求めているので、これらのトラブルについてはユーザとして維持・運用で気を付ける必要があります。
両端接地の目的は、IGBT(PWM)が高速スィッチング素子であるため高周波サージが発生して漏洩電流が増えてモータへ給電するケーブルの金属シース(モータを含む)が電位上昇することを低減するために行います。 以前は、モータのサージ保護のため出力側にACフィルタを設置していましたが、これが経年運用で絶縁破壊するトラブルが発生していました。 このACフィルタを省略して給電ケーブルを両端接地とすることでこのような絶縁破壊トラブルは発生しなくなります。 このような設計の簡略化はインバータ回路にもありIGBT素子の電圧耐量をアップすることでスナバレス化 [1] しており、部品点数を減らすことはトラブル低減・安価化になります。 ある確率で素子破損が起きても予備品交換を簡素化(カートリッジ化)して早い復旧が出来るようにしています。 不測の事態でインバータ本体が破損した場合には凌ぎ運転が出来るようにバイパス回路(商用直送回路、同期切替も可能)を設ける方法もあります。
ユーザサイドとしてはメーカ設計の考え方、過去のトラブル事例を勉強して弱点リスクを理解して運転保守・予備品・更新しないと安定運転が難しい時代です。
関連する下記の Q&A(質疑応答)もご参照下さい。
➀ 質問番号 2020-0026 : ケーブルのシースの接地方法(片端接地方式と両端接地方式)
② 質問番号 2023-0220 : インバータ駆動電動機回路の漏洩電流と対策
③ 質問番号 2023-0226 : 対地静電容量による充電電流
参考文献:
[1] スナバ回路 : Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%90%E5%9B%9E%E8%B7%AF
(産業用電気設備関係の方からの回答です)