現在、短絡電流の仕組みや計算の学習を行っています。
各値の意味や図で表すところは理解できたつもりですが、調べていくうちにも、添付画像のような短絡発生時の初期直流電流がどこから発生するのか、なぜ発生するのか分かりません。
上記ご教授願います。
短絡現象は過渡現象であり、インダクタンス L および抵抗 R が電源 e(t) に直列に接続されている交流回路においてスイッチ S を閉じたとき (回路を短絡したとき) に流れる電流を i (t) とすると、図1 の式のようにようになります。 この基本式より直流分および非対称電流 (交流分と直流分の合成電流) を求めることが出来ます。 交流分と直流分の計算式については、参考文献 [1] [2] をご参照下さい。 Web には関連する資料が沢山アップロードされていますので併せてご参考にして下さい。
実際の短絡電流は短絡瞬時に大きな電流が流れ時間と共に減衰します。 図2 のように短絡電流は、交流電流(交流分)と直流電流(直流分)が重畳されたものになります。 短絡直後で直流成分を含んだ波形の電流が非対称短絡電流、定常的な状態の短絡電流が対称短絡電流です。
ご質問 (Question) にある貴図を基に、用語について説明します。 貴図の A が短絡瞬時の直流分です。 直流分は時間と共に減衰します。 貴図の Ik が定常電流値(実効値)で、2√2 Ik が Peak to Peak の値になります。 これに対して、図2 に記載の I”k が初期対称実効値です。 貴図の IP および 図2 の ip がピーク値です。 貴図の上部包絡線が t=0 の軸と交わる値が 2√2 I”k (理論上の最大値)になります。
ところで、貴図、図2、および 図3 の右図は交流分が時間と共に減衰していきます。 ところが、図3 の左図は交流分が一定で時間が経過しても減衰しません。 これは、左図は Far-From-Generator(発電機が短絡電流に影響を与えないような遠い所にある)、右図 は Near-to-Generator(発電機が短絡電流に影響を与えるような近い所にある)ためです。 国際電気標準規格 IEC60909 による短絡電流計算方法では、このような条件も含めて計算しています。
IEC60909 による短絡電流計算方法については、質疑応答 2020-0002 IEC規格による短絡電流計算手法 の添付ファイル File No. SCC-IEC909-UG29 -4.pdf をご参照下さい。 また、このコミュニティの「Q&Aゾーン」に、短絡電流に関して20項目近い質疑応答がアップロードされています。 Q&Aゾーンから 「短絡」 または 「短絡電流」 で検索してご覧になって下さい。
参考文献:
[1] 交流回路の短絡電流 : 日本舶用機関学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime1966/9/4/9_4_308/_article/-char/ja/
[2] 交流回路の短絡過渡現象について(非対称短絡電流、対称短絡電流とは) : プラント電気計装エンジニアのメモ https://electrical-instrumentation.com/entry/2022/02/04/185112
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)