高圧(6.6㎸)系で地絡事故が発生し、健全回線の地絡方向継電器 67 が複数不要動作しました。 このトラブルについて、原因と対応策についてご教示下さい。
(産業用電気設備関係の方からの質問です)
弊社でも高圧 (3.3kV)系でケーブルの地絡が発生し、健全回線の地絡方向継電器 67 が複数不要動作した事例があります。 これは,ケーブルの地絡でよく見られる 間欠地絡 [1] が原因でした。
1. 現象
(1) 3.3kV 電源を工場に給電する配電所(二次変電所)の複数のフィーダの内の一つで、ケーブルの地絡事故が発生しました。
(2) 地絡が発生したフィーダは 67 が動作しトリップしたのですが、複数の健全フィーダもトリップしました。
(3) ケーブル間欠地絡の波形は下図のようで、当時のディジタル形保護継電器は電流位相を正しく判別することが困難であったため健全回線の 67 が動作したものです。
2.対策
(1) 国内メーカー数社にこの現象をお知らせし、実際にケーブル地絡を発生させる実験 [2] を行った上で保護継電器の動作状況を調査していただきました。 その結果、多くのメーカーの保護継電器が間欠地絡の電流位相を正しく判別できないことが分かりました。
(2) 各メーカーに,電流検出・位相検出の演算アルゴリズムを変更していただき、不要動作が発生しないよう対応していただきました。 最終的には実験により正常動作を確認する立会試験も行いました。
質疑応答 2023-0235 (現場とトラブル) 多重接地による地絡保護の不要動作 で、多重接地によるトラブル事例がありますが、弊社のトラブルは EVT 多重接地が原因とは考えておりません。 弊社のトラブルは継電器の演算アルゴリズムの問題と考えております。
補足説明 :
[1] 間欠地絡 : 中性点非接地方式で発生する異常現象の一つで、1線地絡事故が起こったとき、地絡点のアーク電流が消弧と再点弧を交互に繰り返し、健全相に異常振動電圧が発生する現象をいう。
[2] 実際にケーブル地絡を発生させる実験 : ケーブルにピンホールを空け、塩水に浸して地絡実験を行いました。 上図の波形がこの実験の結果です。 健全相の零相電流 I01 および I02 のように乱れた波形になるので、正弦波と同じ演算アルゴリズムでは正しく故障検知できません。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)