接地 (アース) とは、電気機器の導電性部品や電路と大地を電気的に接続することです。 しかし、接続先の大地には、電線を取り付けられるような端子もなければソケットのような受け口があるわけではありません。 そこで登場するのが接地極と接地線です。 接地極は、板状、棒状、線状など様々な形状の物があります。 この接地極を土に差し込んだり埋めたりすることで大地との電気的接続を行います。 そして、この接地極に接続された接地線と呼ばれる導電性の良い電線を介して電気機器の導電性部品や電路と大地との電気的接続を達成させます。
接地は、別名 “アース” や “グランド” と呼ばれることがあります。 これらの用語は、使用目的が違う場合もありますので、扱いには注意が必要です。 なお、本解説では、電気設備の技術基準の解釈で使用されている “接地” という用語で統一したいと思います。
接地抵抗 とは、“電気機器などを大地と接続した時に電気の通りにくさを示す値” です。 そのため、接地抵抗の単位は、電気抵抗の単位と同じ〔Ω〕(オーム)を用います。 そして、接地抵抗の定義は、以下のように示されています。
図1 に示すように、ある接地極に接地電流 I[A]が流入すると接地極の電位が周囲の大地に比べて E[V]だけ上昇します。 このときオームの法則により (1) 式となり、この抵抗 R〔Ω〕を接地抵抗値とします。 なお、接地極とその周辺に発生する電位は 図2 のようになります。
図1 埋設された接地極 図2 接地極とその周辺に発生する電位
次に、この接地抵抗値の構成について考えます。 接地抵抗値は、 ① 接地線(アース線)や接地極自体の抵抗、 ② 接地極と大地との接触抵抗、 ③ 大地の持っている抵抗、の3つの抵抗値からなります。
① は、一般的に導体と呼ばれる電気抵抗が非常に小さいもので作られています。 そのため、① の電気抵抗は、ほとんど無視できるような値です。
② は、接地電極を埋設する時の施工品質によって決ります。 接地極を大地に埋設する際、接地極(金属)と土壌(大地)との接触面が密着するよう慎重に作業することで、この抵抗値を無視できるくらい小さな値とすることができます。
③ の電気抵抗は、① や ② と比較して大きい抵抗値を示します。 つまり、接地抵抗値は、③ の大地の持つ電気的抵抗(大地抵抗率 ρ 〔Ωm〕)の値の大きさに比例します。 大地抵抗率の性質については、質疑応答 2023-0242大地抵抗率 で解説します。
(日本地工株式会社の方からの回答です)
事務局より:
私自身に経験と知識がなかった事もあり、これまで「接地工事」および「電気接地抵抗測定」についての質疑応答 (Q&A) がありませんでした。 そこで、私が知りたい接地についての基礎と、接地工事および接地抵抗測定に関する 12 の Question について、日本地工株式会社の方に解説して頂きました。 質疑応答2023-0241~0252 をご参考にして下さい。
接地の目的は、質疑応答 2023-0240感電と感電対策 で記述しているように、① 事故時の機器の電位の上昇を抑える、② 漏電遮断器や過電流遮断器などの保護装置の動作を確実にすることです。 質疑応答 2023-0240 も併せてご参照下さい。
これまでの質疑応答 (Q&A) の中で、接地工事の種類(A種・B種・C種・D種)や接地方式(個別接地方式、連接接地方式、共用(共通)接地方式、および統合接地)、等電位ボンディング、地絡電流と保護などについての説明が度々アップロードされています。 「接地、地絡」 などのキーワードで検索してみて下さい。 20~30項目のQ&Aを見ることが出来ます。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)