接地極の種別として、① 棒状接地極、② 板状接地極、③ 接地線(埋設地線、メッシュ工法など)、④ 構造体利用接地工法、⑤ 接地極の併用工法 などがあると思いますが、それぞれの接地極(工法)について、特長、経年変化、経済性などを教えて下さい。
質問にある各接地極について、質問の番号順(①~⑥)に解説をします。 なお、ここで紹介した以外にも様々な接地工法がありますので、これだけに捕らわれないようご注意ください。 各接地電極のサイズは、「内線規程 (1350-7 接地極)」で腐食や施工時の強度など様々な観点から寸法が推奨されていますので、そちらをご参照ください。
➀ 棒状接地極
棒状接地極にも幾つかの工事方法がありますので、その種別に従って説明します。
(1) 棒状接地電極の打ち込み (図1参照)
棒状の接地電極をハンマーや電動工具などを用いて打ち込む方式です。 接地電極の形状や長さ、材料も様々な種類があります。 形状で言えば、S形アース棒や丸棒があり、長さも様々なものがあります。 更に、継ぎ足しが可能な棒などもあり、状況に応じて使い分けます。
一般的に使用される材料は、芯材に鉄を用います。そのまま接地極として使用すると錆や腐食によってその機能を失い易いため、銅被覆や銅メッキ(アース棒など、)溶融亜鉛メッキ(ステップアースなど)など金属被覆による腐食対策を施したものが推奨されています。 金属被覆材料によって、防食効果に違いがありますので、必要に応じて選択が必要です。
(2) ボーリング工法 (図2参照)
ボーリングマシンにより地盤を掘削し、その掘削孔に棒状などの接地極を挿入・埋設するまでの工程を総称して “ボーリング工法” と呼びます。 ボーリングマシンとは、圧力や打撃もしくは回転力により地盤を掘削する機械で、手動式の装置から、キャタピラを装着した大型自走式装置まで多様な機種があります。 また、掘削方式の違いによっても、ロータリー・ボーリングマシン、パーカッション・ボーリングマシン、ロータリー・パーカッション・ボーリングマシンなどがあります。
この工法は、打ち込み式接地棒では対応不可能な岩盤や玉石・砂礫のような硬質地盤における接地工事に適応します。 また、低い接地抵抗値や安定した接地抵抗値が必要とされるケースでも用いられます。 使用する電極材料は、先に示しました様々な種類の棒状接地電極や銅線などです。 孔を掘って埋めるので、孔に入る電極であれば良いということになります。 使用するボーリングマシンは掘削深度・現地施工条件に合わせて選定します。 掘削径は一般的には φ66~φ116、掘削長は地表面から100m以上も掘削することがあります。
② 板状接地極 (図3参照)
板状の接地電極を埋設する方法です。 板状の接地極としては、一般的に銅の板(銅板)が多く用いられます。 接地極の埋設は、板を地表面に対して垂直方向に埋設する方法を垂直埋設と呼び、銅板を地表面に対して水平方向にして埋設する方法を水平埋設といいます。 どちらの手法が良いかというのは、現地の施工状況によります。 例えば、地表面を広くすき取り埋設する場合は、地面に水平に置くことが良いでしょう。 一方、接地極を埋めるために、限られた範囲しかないのであれば、垂直埋設が良いでしょう。
なお、接地抵抗値は余裕をもって確保する必要があります。 板状接地極を浅い層に埋設する場合は、季節変動や経年的変動の影響によって接地抵抗値の変動が大きくなる傾向があります。 接地抵抗値は、十分にゆとりをもって低めの抵抗値を確保しておくことが必要です。 また、凍土の問題がある地域については、凍結深度以下に埋設しなければなりません。
③ 接地線を用いた接地工法 (埋設地線、メッシュ工法)(図4参照)
スコップや重機により地盤を掘削し、その掘削穴に線状の接地電極を埋設する方法です。 接地線の組み合わせ方によって、埋設地線、環状接地、放射状接地、メッシュ接地など様々な呼ばれ方があります。 接地線は、一般的に銅の裸より線を使用します。 線の太さは、想定される最大電流を安全に流せること、長年の埋設によって生じる腐食に対しても耐えうるもの、土圧などの圧力によって容易に切断しないなど、様々な点を考慮し余裕を持った太さが選ばれます。 この接地極も浅い層に埋設するため、季節変動や経年的変動および凍土などの影響によって接地抵抗値の変動が大きくなる傾向があります。 接地抵抗値は、十分にゆとりをもって低めの抵抗値を確保しておくことが必要です。
埋設地線(線状電極)は、線状の接地極を直線状に埋設するものです。 土地の形状や道路に沿って埋設される場合など、L字型やS字型のような形で施工されることもあります。 但し、急確度での曲がりや幾度も曲がりくねった状態で施工すると、接地抵抗値の低減効果が悪くなることもあります。 できるだけ直線に近い形で敷設することをお勧めします。 比較的、資機材の搬入に苦労するような山岳地などの工事で良く用いられています。
環状接地は、大地の中に裸銅線などの線状の導体を環状に埋設したものを言います。 環状というと円形のものを想像しますが、一般的には、線状の接地極によって閉ループを形成した接地極全般を環状接地と呼んでいます。 環状接地は、建物や敷地の外周に沿って施工されるケースが多く見られます。
メッシュ接地は、接地線を網状(メッシュ状)に埋設する方法です。 特に、発電所や変電所のように、大きな地絡電流が流れる施設で用いられることが多くあります。 広い敷地があれば、広範囲に接地線を巡らすことができるため低抵抗値の確保が見込まれます。また、敷地全体にメッシュ接地を広げることで等電位化による保護も期待できます。
④ 構造体利用接地極
建築構造体は、鉄筋コンクリートや鉄骨で作られた建築物の杭基礎や地下階などの表面が大地と密着しており、構造物そのものが良い接地体になっています。 この構造物を構成する鉄筋や鉄骨などの金属体を接地極として利用する方法を構造体利用接地極(構造体接地)といいます。 電気設備技術基準の解釈 第18条 に構造物を接地として利用できる条件が示されています。 詳細については、そちらをご確認ください。
⑤ 接地極の併用工法
以上では、代表的な接地工法を紹介してきましたが、このいずれか一つの工法に絞る必要はありません。 各々の接地工法には長所・短所がありますので、それらの異なる長所を上手く組み合わせて活用するケースもあります。 表1 に、上記で解説した接地工法の特徴をまとめました。
表1 各種接地工法の特徴
下図は、上記で示した接地工法の例です。 ご参考にして下さい。
(日本地工株式会社の方からの回答です)
事務局より:
雷保護に関する接地方式、接地極およびその接地特性について、質疑応答 2021-0148 (雷保護) 接地極(接地方法)の種類と接地特性 がアップロードされています。 併せてご覧になって下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)