必要な接地抵抗値が出にくい場合、有効な接地抵抗低減法があるでしょうか? 接地抵抗低減剤(低減材)を使用することにより接地抵抗を効果的に低減することが出来ると思いますが、そのメリットとデメリットについて教えて下さい。 低減剤の経年変化および経済性についても教えて下さい。
ご質問について下記のように回答します。
1. 接地抵抗値が低減しにくい場合の原因
接地抵抗値が低減しにくい場合、その原因をしっかりと見極めなければなりません。 例えば、大地抵抗率が高いのか(See Note1)、接地抵抗測定にミスがあるのか(See Note2)、施工方法に問題があるのかなど、その問題によって対処方法が変わります。
施工方法に問題がある場合として考えられる原因としては、接地極と大地との間の接触が悪く、大きな接触抵抗が発生しているケースです。 接触抵抗は、電極表面と土地盤との間に空隙が出来てしまう事で発生します。 この接触抵抗を出来るだけ小さくするためには、以下のような対策が必要です。
- 接地極の周りの地盤の十分な転圧
- 粒子の細かい土質を選んで施工する。 も しくは、粒子の細かい土を空隙に充填する。
- 接地抵抗低減剤を利用する。 接地極と大地との間の空隙部分に接地抵抗低減剤を流し込む。
(Note1) 詳しくは、下記の項目を参照してください。
- 〔2023-0242 大地抵抗率〕
- 〔2023-0243 接地計画から接地施工後の定期管理までの作業手順〕
- 〔2023-0244 接地極の種別とその特長〕
- 〔2023-0245 接地抵抗計算〕
(Note2) 詳しくは、下記項目をご参照ください。
- 〔2023-0247 接地抵抗の測定方法〕
- 〔2023-0248 電位降下法による接地抵抗測定〕
- 〔2023-0249 接地抵抗測定の誤差の要因と事例〕
2. 接地抵抗低減剤について
(1) 利用に関してのメリットとデメリット
接地抵抗低減剤とは、接地極の施工における副材として利用されます。 例えば、① 接地極の周りに滞留させて接地極と地盤との密着性を高める、② 疑似電極として接地極と大地との接触面積を大きくする、③ 周辺大地に浸透させて周辺大地の抵抗率を低減させる、などの目的で利用されます。
メリットとしては、「あと少し、接地抵抗値を低減させたいが、もう接地極を埋設する場所がない」と言った時、接地抵抗低減剤を利用することで、比較的低コストで目標の接地抵抗値まで低減できる可能性があります。 また、地質によっては接地極と地盤の密着性を保つことができないケースがありますが、流動性の高い接地抵抗低減剤であれば、両者の密着性を確保することができます。
一方、デメリットとしては、接地抵抗低減剤の利用に際して、その材料選定に注意が必要なことです。 市場には、様々な性質の接地抵抗低減剤がありますが、製品の選定を誤ると「接地抵抗低減剤は使い物にあらない !!」といった評価につながってしまうことが見られますので、購入に際し、各低減剤の性質を十分に把握した上で利用していただきたいと思います。
例えば 図1 で示したように、接地極と大地との間にできてしまった狭い空隙に接地抵抗低減剤を注入する場合は、流動性の高いもの(水っぽいもの)でないと流れ込みません。 ただし、流動性の高いものであると、時間と共に空隙や大地に浸透していきますが、接地抵抗低減剤が硬化しなければ接地極の周りから無くなってしまいます。 そうならないためには、流し込んだ後に適度な時間で硬化することも必要となってきます。
一方、モルタルのような流動性の低い低減剤だと狭い空隙に入り込むことができませんので、接地抵抗値低減剤効果が得られません。 ただし、砂礫(されき)のような地盤自体に隙間が多くあるようなケースで流動性の高い低減剤を流し込んだ場合、あっという間に地面に吸い込まれてしまいます。 このような地盤に対しては、モルタルのような粘性の高い低減剤が適しています。
このように、地盤の状況や接地極施工方法に応じて適切な接地抵抗低減剤を利用する必要がありますので、利用に関してはご注意ください。
(2) 低減剤の経年変化について
接地抵抗低減剤の経年変化については、基本的には、接地電極と同じように長期的に変動なく性能を保つことが求められます。 ただし、各メーカによって接地抵抗低減剤への要求仕様が異なり、性質が異なる場合があります。 ご利用にあたりましては、導入しようとする工事現場に適合しているか確認の上お使いいただければと思います。
(3) 経済性について
接地抵抗低減剤の利用の経済性は、適切な利用方法であれば大きな効果を生み、接地工事に対しての大きなコスト削減効果が生まれます。 一方、先にも述べたように、使用方法に謝りがあれば、全く効果が得られず無意味になってしまうことがあります。 その点については、先に示しました注意点を十分にご理解して施工を行ってください。
もう一つ、コスト比較の方法を紹介します。 接地抵抗値は、電極の表面積の増大に比例して低減します。 つまり、接地抵抗低減剤を利用する場合、低減剤の体積が大きくなればなるほど接地抵抗値が低減するということになります。
接地抵抗低減剤は、購入時の量をそのままで施工するものと、粉体で購入し現地で水と混ぜて施工するものがあります。 購入時の量のままで施工するものであれば、施工時の体積もそのままです。 一方、現地で水と混ぜて施工する製品の場合は、施工時に購入時の体積が何倍にもなるケースがあります。 このようなケースでは、購入時に割高感があっても実は出来上がり体積比で見るとコスト安な場合もありますし、更に運搬費もコストダウンになることもあります。 経済性を考える上では、このようなことも念頭に入れておくのも良いかと思います。
(日本地工株式会社の方からの回答です)