質疑応答 2023-0253「送配電系統において周波数低下が発生する要因」で、周波数が低下する要因、および周波数低下の許容範囲について説明して頂きました。 引き続き、送配電系統の周波数低下により生じるトラブルや障害などの周波数低下のリスクについて、出来ましたら具体例を基に説明して下さい。
Kameda Kazuyuki Answered question
地震や台風などによる電源脱落に伴う周波数低下によって生じる代表的なトラブル事例について紹介します。 このような電源離脱が発生しても周波数を維持し続け、大規模停電を回避することが重要です。 そのために、一般送配電事業者 [1] が供給エリアだけで対応することに加え、広域的に相互協力する事が信頼性を高める上で重要であり、電力広域的運営推進機関 (OCCTO) [1] と一体となって、送配電網協議会(TDGC) [1] を中心に継続的に検討が進められています。
- 2016年9月および2017年2月、中部電力管内において落雷による発電所脱落が発生し、西日本全域に0.7Hzの周波数低下が発生し、操業損失を受けた事業所が複数発生した。
- 2018年9月6日、北海道胆振地方中東部を震源とするマグニチュード7の地震が発生し、北海道全域が停電(ブラックアウト)した。この地震により大型火力発電機がトリップし、運転継続していた発電機用のボイラに不具合が発生し、出力増加が出来ず、周波数低下を加速させ、負荷遮断でも間に合わず北海道全停電に至った。 地震発生からブラックアウトまでに道東エリアの分断など多くの事象が発生している。 本件について、電力広域的運営推進機関 [1] も、ブラックアウトのメカニズムについては比較的しっかり検討しているが、ブラックアウトからのスタート(ブラックスタート)に多くの問題があったにも拘わらず、検討が十分であるとは言えない。
- 2021年2月と2022年3月の福島県沖を震源とする地震では、産業界の自家発の解列による影響だけでなく、多くの発電所脱落により東京電力管内の負荷遮断が動作し、福島沖の地震で静岡の一部のエリアが停電となった。
参考 : 2011年3月11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震(東日本大震災)が発生、これに伴う大津波も発生し福島原子力発電所が大きな被害を受けた。 電力がひっ迫し関東エリアでは計画停電も実施された。
送配電系統の周波数低下により生じる産業界への影響について、一般論として、下記のようなトラブルが考えられ、これらに対する対応策の検討が必要です。
- 産業界では、周波数変動に脆弱なインバータ機器を多く採用している工場等は正常な機器の操業が困難となる。 インバータがトリップし操業損失が多発する可能性がある。(1つの工場ではなく、広範囲に影響が出る可能性が高い)
- プロセス流体を扱う業界では、インバータを採用していなくても回転数低下影響を受ける事がある。 場合によっては自動でバルブが開き流量を維持するため、モータなどの駆動機が過負荷になる可能性がある。
- 発電設備は、調定率に従い運転継続するが、余力がなく調定率どおり運転できない発電設備はトリップする可能性がある。 発電設備がトリップすると更なる周波数低下へと波及する。
関連する質疑応答 : [1] 質疑応答2023-0260「電気事業法と関連事業および関連団体」参照
(石油学会の方からの回答です)
Kameda Kazuyuki Edited answer