周波数低下リレー(UFR : Under Frequency Relay)を設置する目的および整定値について教えて下さい。 整定値について、系統連携規程(グリッドコート)に規定値などが記載されているのでしょうか?
周波数低下リレーを設置する目的
周波数低下リレー (UFR)は、周波数が一定時間、設定値以下になった場合に動作して周波数低下を検出する継電器です。 UFR は、発電機の保護や電力系統の安定化のために、自動的に発電設備や一部の需要(負荷)を電源系統から切り離す装置です。 産業用の自家用発電設備の立場から見た場合、UFR には以下の2つの目的があります。
1. 発電設備保護用
特にガスタービンは、同軸にある空気圧縮機のサージング防止のため、周波数低下時には速やかにトリップする設計思想となっていることが多い。 スチームタービンは比較的に周波数低下への耐量があるので、質疑応答2023-0253「送配電系統において周波数低下が発生する要因」で記述した連続運転可能周波数に対応した運転を行うことが出来る可能性が高い。 ただし、ガバナ制御モードやボイラの制御、燃料の制約などを用役システム全体としてとらえて UFR の整定値を検討する必要がある。
2. 系統解列用
自家発電設備が系統と連携して一般送配電事業者 [1] に電源供給している場合に、系統の周波数が低下して、自家発電設備が過負荷運転になり過負荷トリップの要因となることを回避し、正常な自立運転への移行することを目的として設置する。
補足 :「単独運転」と「自立運転」の違い
- 系統連系用の UFR とは、系統連系要件上、単独運転防止策(即ち正常な自立運転への移行)として設置し整定される UFR のことです。 各一般送配電事業者 [1] に認識され、整定されるケースがあります。
- 単独運転とは : 発電設備が商用電力系統と系統連系している状態において、何らかの原因で商用電源系統から切り離された系統内において、発電設備の運転によって生ずる電力供給のみでその切り離された系統内に電気が通じている状態を「単独運転」と言います。
- 自立運転とは : 発電設備が商用電力系統と系統連系している状態において、発電設備を系統から解列し、需要家負荷をその発電設備で直接運転している状態を「自立運転」と言います。
- 単独運転(良くない事象): 例えば、一般送配電事業者の変電所から、複数の会社や工場にループ系統で電源共有してる場合、変電所の遮断器が切れた場合、そのループ状に接続されている自家用発電設備は、他社や他の工場負荷へも電源供給することになり、過負荷トリップのリスクが発生します。
- 自立運転(正常): 自家発を有する事業所構内で、自家用発電設備の能力にあった負荷のみに電源供給することにより安定運転が可能になります。
周波数低下リレーの整定値
質疑応答2023-0254「送配電系統の周波数低下により生じるトラブルや障害」で紹介した、2016年および2017年の中部電力管内の周波数低下、2018年の北海道電力ブラックアウトなどに起因して「電力供給力低下による電力バランスの乱れにより、急激に周波数が低下」するなどのトラブルがあり、電力広域的運営推進機関 (OCCTO) [1] から「系統解列用波数低下リレー (UFR) について、-5%(北海道は -6%)、2秒に設定値変更願い」が出されました。
このように、UFR の整定値は、2019年に系統連系規程 [3] に標準整定値(-5%、2秒)として規定されました。 しかし、前述のように自家発への適用は課題があるため、一般送配電事業者 [1] と発電事業者 [1] がしっかりと協議・交渉して設定値を検討できる仕組みに、2022年に系統連系規程 [3] に反映されました。 さらに、個別協議時に確認すべき項目について、石油学会を中心とした産業有志連合[2] でリスト化案を作成し、送配電網協議会 (TDGC) [1] や「代表一送」(See Note)経由で全ての一般送配電事業者の確認をもって制定し、2023年1月より一部の産業界と全ての一般送配電事業者 [1] が運用を開始しました。
(Note) :「代表一送」とは、一般送配電事業者 [1] の代表のことです。 一般送配電事業者の代表として事務局的な位置付けで、送配電網協議会 [1] の担当者と一緒に様々な検討や活動をしているようです。 産業有志連合 [2] のメンバーとの検討時は、中部電力パワーグリッドの方が「代表一送」を務めていました。 「代表一送」は、輪番制となっていて数年ごとに交代するようです。
関連する質疑応答 : [1] 質疑応答2023-0260 「電気事業法と関連事業および関連団体」参照 [2] 質疑応答2023-0259 「系統連携UFR整定に拘わる産業有志連合の取り組み」参照 [3] 質疑応答2023-0257 「グリッドコートと系統連携規程」参照
(石油学会の方からの回答です)