電気事業法とその関連事業および関連団体について、関連が複雑で良く理解できません。 電気事業法の概要とその関連事業および関連団体、監督官庁について説明して下さい。
ご質問の電気事業法とその関連事業および関連団体について、① 電気事業法、② 電気事業法における主な規制、③ 電気事業者団体 に分けてその概要を説明します。 この回答は、既にアップロードされている 質疑応答 2023‐0253~2023‐0259 を補足するための資料として纏めました。 実務にあたっては、電気事業法そのものをご覧になるか、Web Siteにアップロードされている関連資料等、最新の資料を参照して下さい。
電気事業法
電気事業法は、「電気事業および電気工作物の保安の確保(電気事業の運営の適正化・合理化、および電気工作物の工事・維持・運用)」に関する規制を定めた法律で、1964年(昭和39年)に法律第170号として制定され、その後、何度も改正されてきました。
2000年から電力の小売り一部自由化がスタートし自由化の範囲が段階的に拡大され、2016年4月の改定で小売り全面自由化されて、一般家庭を含むすべての消費者が電力会社を選べるようになりました。 下記の 1項~6項 のように事業者の種類も大幅に見直され、これらの事業者を電気の生産から消費まで機能別に分類し、それぞれ必要な規制を行うことになりました。 監督官庁は、経済産業省資源エネルギー庁 です。 各種の電気事業を営む事業者は、電気事業法の規制に基づき以下の義務が課されています。 電気事業法に違反した事業者は、技術基準適合命令や許認可の取り消し、さらに刑事罰の対象になります。
- 電気事業法に基づく登録・許可を受け、または届出をしなければならない。
- 各種電気事業に対応する業務規制を遵守する。
- 発電・蓄電・変電・送電・配電・電気の使用のために設置される工作物(電気工作物)については、電気事業法の規制に基づいて取り扱う。
1. 小売電気事業者
小売電気事業者は、一般家庭やビル、工場などに電気を供給する事業者であり、その主な業務は電力を調達して販売することです。 電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、小売電気事業を営むために経済産業大臣の登録を受けた者をいいます。 従来から小売を行っていた電力10社と、これら以外の新規参入事業者を指して「新電力」といいます。 全事業者の一覧については、資源エネルギー庁 「登録小売電気事業者一覧」 をご参照下さい。
2. 一般送配電事業者
一般送配電事業者の主な事業は、発電所で発生した電気を、需要家が電気を使用する地点まで、送電線、配電線などで送り届けることです。 送配電網の新たな建設や保守メンテナンス、電力需給バランスを維持する事業などを行います。 電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、経済産業大臣から一般送配電事業を営む許可を受けた者をいいます。 日本全土は10の供給区域に分割されていて、供給区域ごとに1事業者が存在します。 北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東京電力パワーグリッド、中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の10社です。
3. 送電事業者
送電事業者の主な事業は、送電用の電気工作物により一般送配電事業者に振替供給(受電と同時に別の場所で同量の電気を供給すること)を行うことです。 送電線、変電所などを維持、運用し、一般送配電事業者との契約に基づいて送電することを事業とします。 電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、経済産業大臣から送電事業を営む許可を受けた者を言います。 2020年(令和2年)4月時点で、電源開発送変電ネットワーク、北海道北部風力送電、福島送電の3社が送電事業者に該当します。
4. 特定送配電事業者
特定送配電事業者の主な事業は、自らが維持、運用する送電/配電用の電気工作物を使って、特定の供給地点において託送供給を行う(発電事業は除く)ことです。 電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、特定送配電事業を営むことを経済産業大臣に届出した者をいいます。 2020年12月28日現在、株式会社JNCパワー、王子製紙株式会社、株式会社グリーンサークルなどの計31事業者が届け出をしています。 全事業者の一覧については、資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」をご参照下さい。
5. 発電事業者
発電事業者は、発電設備を有する事業者で、小売電気事業のために供給する電力の合計が1万kW以上であることが条件です。 電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、発電事業を営むことを経済産業大臣に届出した者をいいます。 これまで「電気事業者以外の者」とされていた再生可能エネルギー発電事業者も、改正後は発電事業者となります。 資源エネルギー庁の「登録発電事業者一覧」によると2020年11月30日時点で、計942事業者が届出をしています。
6. 特定供給者
一般に、電気事業を営む場合以外の電気の供給を特定供給といいます。 電気事業法は、需要家利益を保護するため、電気を直接需要家に供給する場合には、一般電気事業または特定電気事業の許可を要することとしていますが、需要家保護の必要性が弱い一定の場合には、電気事業以外の供給を認めています。 特定供給を行う場合には、原則として経済産業大臣の許可を得ることが必要です。 なお、自家発電した電気を自家消費する場合は許可が不要であり、これに類似すると判断されるもの(同一構内の需要に対する供給、地方公共団体の会計主体が異なる内部組織への供給、自己の社宅への供給等)も許可が不要とされています。
電気事業法における主な規制
電気事業法に基づき、電気事業法に定められた電気事業者の類型ごとに、以下の事業等が登録制、許可制、届出制とされています。
- 登録制の事業: 小売電気事業(法2条の2)
- 許可制の事業: 一般送配電事業(法3条)、送電事業(法27条の4)、配電事業(法27条の12の2)、特定供給(法27条の33)
- 届出制の事業: 特定送配電事業(法27条の13)、発電事業(法27条の27)、特定卸供給事業(法27条の30)、特定自家用電気工作物の設置(法28条の3)、小規模事業用電気工作物の設置(法46条)
電気事業者団体
電気事業法に基づき、日本の電気事業を円滑に推進することを目的に設立された電気事業団体で、下記のような事業者団体が設立されています。
① 電力広域的運営推進機関 (OCCTO) 、② 日本卸電力取引所 (JEPX)、 ③ 電気事業連合会 (FEPC)、 ④ 送配電網協議会 (TDGC) 、⑤ 公営電気事業経営者会議、⑥ 全国小水力利用推進協議会、⑦ 水力発電事業懇話会、⑧ 太陽光発電協会 (JPEA) 、⑨ 日本地熱協会 (JGA) 、⑩ 日本風力発電協会 (JWPA)、⑪ 日本木質バイオマスエネルギー協会、⑫ バイオマス発電事業者協会、⑬ 電気事業低炭素社会協議会
➀ の 電力広域的運営推進機関 (OCCTO : Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators)は、電気事業法に基づき、日本の電気事業の広域的運営を推進することを目的として、2015年4月に設立された事業者団体です。 OCCTO は、会員各社の電気の需給状況を監視し、需給状況が悪化した会員に対する電力の融通を他の会員に指示します。 発電電力の送電網への給電が供給過多になった場合、まず火力発電から絞り込まれ、バイオマス発電、自然変動電源(太陽光と風力)、長期固定電源(原子力や揚水除く水力)の順で抑制されます。 日本の全ての電気事業者がこのOCCTOの会員となることが義務付けられています。
④ の 送配電網協議会 (TDGC : Transmission & Distribution Grid Council) は、送配電事業の一層の中立性・透明性を確保する観点から、一般送配電事業者による独立した運営組織として、2021年4月に発足しました。 一般送配電事業者10社の協調、関係行政機関との連携、関係行政機関への提案、情報発信などのための業界団体です。 送配電網協議会は、送配電事業に係る更なる効率化や広域運用の検討に取組むとともに、系統・需給運用、設備計画、需給調整市場に係る受付窓口業務や技術的事項の検討、送配電に係る保安業務、託送関連業務について、一般送配電事業者と連携して業務運営を行っています。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)