質疑応答 2023-0261「変圧器課電時に発生する励磁突入電流現象」で、励磁突入電流現象および励磁突入電流発生のメカニズムについて説明して頂きましたが、その励磁突入電流現象によってどのような障害が生じるのか、障害の実例について説明して下さい。
Kameda Kazuyuki Answered question
ご質問の件について、「励磁突入電流現象の特長」と「励磁突入電流によって生じる障害」に分けて説明します。
1.励磁突入電流現象の特長
図1は、励磁突入電流現象に伴い各種機器に影響を及ぼす「電圧低下量(%)と継続時間(s)の限界」をグラフ化しています。 図の赤枠(点線)に示すように、励磁突入電流現象は、電圧低下量 3~20%、継続時間 0.02~600秒程度であること、さらに電流が3相不平衡な尖頭波形の歪電流となることから、下記のような特徴があります。
- 商用周波数現象なのでその減衰が遅く、継続時間が断然長い。
- 電圧の低下、電流の歪が共に問題となる。
- 変圧器課電開始時の現象なので変圧器の課電操作の度毎に生じ、その発生頻度が断然多い。
- 商用周波数現象なので現象が付近一帯の広範囲な負荷系に及ぶ。
雷撃などにより発生する電圧瞬時低下現象の該当範囲(継続時間は通常100ms以内の範囲)を図中に青枠(点線)で表示しています。 両者を対比すると、励磁突入電流現象の方が電圧低下量は小さいものの、上記 ①~④ のすべての点で雷撃等による電圧瞬時低下現象よりはるかに深刻なものとなります。
2.励磁突入電流によって生じる障害
励磁突入電流によって生じる障害の事例を纏めると下記のようになります。 励磁突入電流は数秒から数10秒間継続し、以下のような障害を引き起こします。
- 保護継電器の誤動作、配線用遮断器のトリップ、ヒューズの溶断など
- 電動機駆動プロセス系への影響
- 波形歪の影響等による計測、制御系への影響
- 情報管理機器(サーバーなど)への影響
- 音響機器、洗濯機などの家電製品などの変調、PCの電源喪失
(株式会社興電舎の方からの回答です)
Kameda Kazuyuki Edited answer