メーカーから提示される励磁突入電流の値は、電源側インピーダンスがゼロのときの理論値であると聞いています。 実際には電源側インピーダンスが存在するので、その効果によりメーカーから提示された値より抑制された値となるのではないかと想像します。(仮にこの考えが正しいとした場合)電源側インピーダンスを考慮した励磁突入電流の計算法を教えて下さい。また励磁突入電流が電源側インピーダンスに依存しない性質をもつものであれば、その理由を解説頂きたくよろしくお願いします。
(福田浩一さんからの回答です)
事務局より :
この質問は、質疑応答 2022-0194 「変圧器の励磁突入電流の計算」 の追加質問としてアップロードされたものです。 しかし、ご質問の中に少し曖昧な点もあるので、2022-0194 とは別件扱いとして、質問事項を下記の4つの質問に整理して、壹岐浩幸さんに回答して頂きました。
- メーカーから提示される変圧器の励磁突入電流は、電源側インピーダンスが ゼロ (?) のときの理論値である?
- 実際には電源側インピーダンスが存在するので、その効果によりメーカー提示値より抑制された値となるのではないか?
- 電源側インピーダンスを考慮した励磁突入電流の計算法は?
- 励磁突入電流が電源側インピーダンスに依存しない (?) のであれば、その理由を説明して下さい。
以下は、4つの質問に対する壹岐さんからの回答です。
質問1 : メーカーから提示される変圧器の励磁突入電流は、電源側インピーダンスが ゼロ (?) のときの理論値である?
【回答】 メーカーから提示される励磁突入電流は、電源側の短絡容量無限大(電源インピーダンスがゼロ)、実際の値の両方のケースで検討していると言えます。 一般的に、変圧器を製造する部門では、電源側の短絡容量無限大(電源インピーダンスがゼロ)として、また、系統解析を行う部門では、顧客に確認した実際の電源側インピーダンスの値を適用して検討しています。 具体的には、変圧器の励磁突入電流データを受領したメーカーに確認して下さい。 励磁突入電流の計算方法については、質問3 をご参照下さい。
質問2 : 実際には電源側インピーダンスが存在するので、その効果によりメーカー提示値より抑制された値となるのではないか?
【回答】 その通りです。 励磁突入電流の大きさは短絡容量(電源インピーダンス)により母線電圧低下に影響を与えます。
質問3 : 電源側インピーダンスを考慮した励磁突入電流の計算法は?
【回答】 変圧器励磁突入電流の計算方法は、電源、電源系統の短絡容量(電源側インピーダンスのデータを入力)、変圧器のヒステリシス特性、漏れインピーダンス、巻線抵抗、などのデータを基に、変圧器は、無負荷として、EMTP (Electro MagneticTransients Program) などの3相瞬時値解析ソフトウェアを用いて計算します。
質問4 : 励磁突入電流が電源側インピーダンスに依存しない (?) のであれば、その理由を説明して下さい。
【回答】 電源側インピーダンスは必ず存在し、励磁突入電流は電源側インピーダンスに依存します。 電力系統は無限大容量でなく、必ず短絡容量(電源側インピーダンス)は有限な容量として定義されます。
(壹岐 浩幸 記)