質疑応答〔2021-0118 海外の配電盤の安全設計〕で海外の配電盤の構造と安全設計について説明して頂いていますが、アークフラッシュ対応の配電盤について、現状の海外および国内メーカーの動向について、もう少し詳しく説明して下さい。
アークフラッシュ対応の配電盤(以下、Arc-Proof 配電盤という)は、短絡アークによる災害を防ぐために設計された配電盤 (switchgear) です。 配電盤の内部で短絡アークが発生した場合でも、周囲に被害を及ぼさない構造になっています。 ここでは、Arc-Proof 配電盤の構造と運用について説明します。
1. Arc-Proof 配電盤の構造
Arc-Proof 配電盤の構造は、高圧配電盤の〔内部アーク性能〕を定義するために、IEC 62217-200 : 2021 で規定 <Note 1> されており、内部アークの分類によって〔A-F, A-FL, A-FLR〕に分類されています。 ここで、A は〔認可された人員 (Authorized personnel) がアクセスできる部屋に設置された配電盤〕と規定されています。
- A-F は、認可された人員 (Authorized personnel) がアクセスできる部屋に設置された配電盤の前面(F-front)のみの保護を提供します。
- A-FL は、ユーザー (users) の保護のために配電盤の前面と側面(F-front、L-lateral)の保護の両方を提供します。
- A-FLR は、ユーザー (users) の保護のために配電盤の前面、側面、および背面 (F-front、L-lateral、R-rear)のすべての保護を提供します。
Arc-Proof 配電盤の具体的な構造および性能等については、ABB, Siemens, Schneider などの海外メーカー、三菱電機、富士電機、寺崎電気 などの国内メーカーの Web Site をチェックするなどして確認して下さい。
2. Arc-Proof配電盤の運用
海外プロジェクトにおけるArc-Proof 配電盤の運用について、弊社では下記のように考えています。
(1) 高圧配電盤
高圧配電盤については、ABB, Siemens, Schneider などのメーカー製 <Note 2> の完全な Arc-Proof 配電盤 (上記の A-FLR) を客先に納入しています。 このカテゴリの配電盤は CB (Circuit Breaker) の引出中、挿入中に事故が起きてもアークが人に向って吹き出すことの無い構造になっているので、〔Arc-flash study 実施の有無によらず(必須とは考えていない)、Arc Flash PPE(保護具)の着用なしで CB の引き出し、挿入が可能〕と客先に説明しています。 これらの配電盤は、〔運転中は扉などを閉めた状態とする、また、扉を開けて CB を完全に引き出してメンテナンス等を行う場合は盤の電源を切ってから行う〕という運用になります。
(2) 低圧配電盤
低圧配電盤については、完全な Arc-Proof 配電盤 (上記のA-FLR) の対応が難しいので、〔Arc-flash study を実施し、Arc Flash PPE(保護具)の着用が必要〕と客先に連絡しています。
<Note 1> Arc-Proof 配電盤に関する規格については、質疑応答 〔2024-0280 アークフラッシュ対応の配電盤(国内規格と国際規格)〕 で説明しますのでご参照下さい。
<Note 2> 国内では、三菱電機、富士電機、寺崎電気などが Arc-Proof 配電盤を製作しているようです。
(エンジニアリング会社の方からの回答です)