ウェンナー法により電極間隔ごとの見掛抵抗率を測定した後、各層の抵抗率を解析する必要があります。 手作業での解析手順を解説願いたいです。
各地層の抵抗率やその層厚(大地パラメータ)を知るためには、〔ρ-a曲線〕を作成し解析を行うことが必要です。 この解析を手作業で実施する場合によく用いられる方法として〔Sundbergの2重標準曲線〕や〔Hummelの補助曲線〕を利用した方法があります。 表1 に測定データ例、図1 に解析結果例を示します。〔ウェンナーの四電極法〕によって地盤の〔見かけ比抵抗〕を測定し、その値をグラフにプロットし、各点を結んで描いたものを 〔ρ-a曲線〕と言います。 この曲線図を解析することにより〔各地層の層厚や大地抵抗率〕が得られます。 これを〔大地パラメータ〕と言います。 大地パラメータの形に表すことによって、どの深度にどんな抵抗率の地質が分布しているのかが分かるため、効率的な接地設計が出来るようになります。 例えば、表1 および 図1 のデータから 表2 のようなデータが得られれば『深度8.0m以降に80Ω・mの低抵抗率の地層があるため、深度8m以上深くまで埋設できる接地工法が効果的である』と判断できます。 このような地質状況であることを知らずに、深度3m程度の接地極の並列施工とすると、同じ接地抵抗値を確保するために10倍以上の接地規模が必要になるでしょう。
これらのデータを基に〔大地パラメータ(各地層の層厚・大地抵抗率)〕を求める手順について説明しますのでご参考にして下さい。 なお、下記の〔特記事項〕に記載したように、この解析が出来るようになるには、相当の熟練が必要となるため有識者の元で訓練してから実施することをお勧めします。
Step 1 : ウェンナーの四電極法で得られたρ-a曲線が描く最初の曲線(電極間隔a[m]が0mから見た時)とSundbergの2層標準曲線のカーブを重ね合わせ、両者が最もよく合致する2層標準曲線のカーブを選び出す。 Sundbergの2層標準曲線は、「ρ2/ρ1」を表す曲線であるため、これによって第1層目と第2層目の比が決定される。
Step 2 : 次に、用紙上にある原点O1(Sundbergの2層標準曲線の原点)をρ-a曲線上に写し取れば、この点の位置から第1層、第2層の地層の境界の深さ(d1)と第1層の大地抵抗率(ρ1)が求められる。 また、ρ1の結果と先に求めた「ρ2/ρ1」から第2層目大地抵抗率(ρ2)が求める事ができる。
Step 3 : 3層構造以上のρ-a曲線では、Hummelの補助曲線を使用して解析を行う。 前述した解析用紙上の原点O1をHummelの補助曲線の原点に重ね、「ρ2/ρ1」の補助曲線をρ-a曲線上に記載する。
Step 4 : 次に3層構造の解析の基になる点を決定するためにρ-a曲線に標準曲線を重ね、第3層の特性と良く合致する標準曲線を決定し点O2を求める。 なお、点O2はこの写し取った補助曲線「ρ2/ρ1」のカーブ上に存在するよう決定しなければならない。 この点が第2層目と第3層目の境界深度d2となり、第3層の大地抵抗率ρ3を求めることが出来る。 この方法をHummel法と呼ぶ。
〔特記事項〕 ρ-a曲線と標準曲線や補助曲線の重ね合わせ(各地層の原点On)設定は、人の感覚的な要素も加わるため非常に個人差が出やすい作業です。 更に、この作業が点O3、点O4、点O5・・・と続いていくと、更にその差も大きくなっていきます。 また、電気探査で得られた点データをどのように滑らかなρ-a曲線に描かせるか(標準曲線に合致するような曲線)にも十分なスキルが必要です。 そのため、10人に解析させたら10通りの解析結果となることもあります。 解析が出来るようになるためには、相当の熟練が必要となるため有識者の元で訓練してから実施することが望ましいと考えます。
(日本地工株式会社の方からの回答です)
事務局より:
質疑応答 2023-0242 〔大地抵抗率〕の2(2)項に大地抵抗率の測定方法として、〔電気探査法(ウェンナーの四電極法)〕についての説明がありますのでご参考にして下さい。 また、下記はChat GPTに質問した〔ρ–a曲線〕〔Sundbergの2重標準曲線〕〔Hummelの補助曲線〕に関する回答です。 詳細については、ご自身でも参考文献などをご覧になって下さい。
〔ρ–a曲線〕とは:
ρ-a曲線とは、地盤の見かけの比抵抗を測定して地質構造を判定するためのグラフです。 この曲線は、特に地下水位、地下水路、帯水層、表層堆積物風化層、地質の判別に有効です。 測定原理としては、地表に設置した電極から電流を流し、電極間の任意の点での電位差を測定します。 この電位差から地盤の見かけの比抵抗を求め、それを電極間隔の関数としてプロットしたものがρ-a曲線です。
ρ-a曲線は、ウェンナーの四電極法と呼ばれる測定手法で得られるデータを基に作成されます。 この手法では、一定の間隔で配置された4つの電極を使用し、2つの外側の電極から電流を流し、2つの内側の電極で電位差を測定します。 測定された電位差と電極間隔から地盤の見かけの比抵抗を計算し、それをグラフにプロットしていきます。 地下が均質でない場合、電極間隔、電極位置、電極配置型などの変化とともに比抵抗の値も変化するため、見かけの比抵抗としてρaとします。
この曲線を解析することで、地下の比抵抗分布を推定し、地質構造を判定することができます。 この方法は、接地抵抗の設計や地質調査などに利用されています。
〔Sundbergの2重標準曲線〕とは:
Sundbergの2重標準曲線は、地質構造の比抵抗法電気探査において使用される理論曲線です。 この曲線は、地下の水平層状構造を調べるために、測定された比抵抗値と電極間隔の関係を表します。 特に、2層構造の地質を解析する際に用いられ、上層と下層の比抵抗値の比率や、電極間隔と層厚の比率に基づいて構築されます。
Sundbergの曲線は、ウェンナーの4電極法で得られる測定データを基に作成され、測定された比抵抗値(ρa)と電極間隔(a)の関係を示すρa-a曲線と比較することで、地下構造の解析が行われます。 この比較により、地下の異なる層の比抵抗値や厚さを推定することが可能です。
Sundbergの2重標準曲線は、特定の地質構造に対する理論的なモデルを提供し、実際の測定データと比較することで、地下の層状構造をより正確に理解するための重要なツールとなっています。 この曲線を利用することで、地質調査や土木工学、環境調査などの分野での地下構造の解析が可能になります。 もし、さらに詳しい情報が必要であれば、専門の文献や技術者に相談することをお勧めします。
〔Hummelの補助曲線〕とは:
Hummelの補助曲線は、地質構造の比抵抗法電気探査において、特に多層構造の解析に使用される理論曲線です。 この補助曲線は、地下の水平層状構造を調べるために、測定された比抵抗値と電極間隔の関係を表す標準曲線とともに用いられます。 具体的には、2層構造の解析が完了した後、3層以上の構造を持つ地質の解析に移行する際に利用される曲線です。
Hummelの補助曲線は、等価抵抗層の概念に基づいて作成され、第1層と第2層を並列抵抗とみなして合成した等価比抵抗を求める際に使用されます。 この方法により、3層構造を示すρ-a曲線の解析が可能になり、より複雑な地下構造の推定が行えるようになります。 ただし、Hummel法による解析は、ある場合には誤差が非常に大きくなる可能性があるため、使用にあたっては注意が必要です。
Hummelの補助曲線は、地質調査や土木工学、環境調査などの分野での地下構造の解析において重要なツールとなっています。 もし、さらに詳しい情報が必要であれば、専門の文献や技術者に相談することをお勧めします。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)