水処理プラントの電気設備設計に拘わっております。 国内プラントでは一般的にTT接地方式が採用されており、海外のプラントではTN接地方式、TT接地方式、両方を見かけることがあります。Q1. TT接地とTN接地はどのように使い分ければ良いのでしょうか? Q2. 防爆エリアではTN接地は採用できない? という話を上司から聞いたこともありますが、皆様がどのようなご見解をお持ちか教えて頂ければ幸いです。
〔低圧電路の接地方式 (TT方式、TN方式、およびIT方式)〕について、質疑応答 2024-0310〔国際規格における低圧電路の接地方式〕に、① 関連する国際規格と国内規格 (IEC 60364/JIS C 60364)、② TT方式、TN方式 および IT方式の結線、③ TT方式、TN方式 および IT方式の意味と特長、④ PE導体、中性導体(N)および PEN導体、などについて説明がありますのでご参照下さい。 また、低圧電路の接地方式について【オーム社〔新電気〕2021年12月号Page 34~39〔現場のギモン解決塾、第17回:接地について ~各種接地方式~〕】に分かり易く説明した資料がありますのでご参考にして下さい。
ここでは、ご質問の Q1 と Q2 についてお答えします・
Q1. TT接地とTN接地はどのように使い分ければ良いのでしょうか?
TT接地システム(TT方式)と TN接地システム(TN方式)は、それぞれの状況と要件に応じて使い分けられます。 以下に主な特長と使い分けのポイントを説明します。 日本では、一般的に配電系統は殆んど TT方式になっていますが、具体的な選択は、設備の種類、規模、安全要件、地域の電気基準などに基づいて決定すべきと言えます。なお、IT接地システム(IT方式)については、質疑応答 2024-0310 をご参照下さい。
TT接地システム (TT方式): 質疑応答 2024-0310 で説明しているように、TT方式は〔電源の中性点(N)と保護接地導体 (PE) をそれぞれ独立して接地する方式〕です。 この方式は日本で採用されることが多く、TN方式と比較して地絡電流が小さくなります。 TT方式では、電源系統は一箇所で接地されますが、機器の接地は系統の接地とは別に行われます。 従って、この方式は、感電保護のために各機器を個別に接地する必要がある場合に適しています。 一般的に、個々の建物で独自の接地を持つことが望ましい場合や、電源系統からの影響を最小限に抑えたい場合に使用されます。
TN接地システム (TN方式): 質疑応答 2024-0310 で説明しているように、TN方式は〔電源の中性点(N)でのみ接地(一箇所で接地)し、機器をその中性点(N)に接続するための保護接地導体 (PE) を電力線と共に接続する方式〕です。 欧州で採用されることが多く、地絡事故時に短絡電流と同等の大きな電流が流れます。また、中性線(電源)と保護導体(金属製外箱)が同電位となる為、雷サージやノイズに強いという特長がります。
TN方式には、中性線(N)と保護導体(PE)を共用する TN-C方式、部分的に共用する TN-C-S方式、そして完全に分離する TN-S方式 があります。TN方式は、電源系統と機器の接地が連動しているため、大規模な施設や工場など、一元管理された接地が可能な場所で好まれます。
Q2. 防爆エリアでは TN接地システム(TN方式)は採用できない?
上司の方が「防爆エリアではTN接地は採用できない」と言われているのは、〔地絡事故時に短絡電流と同等の大きな電流が流れる〕ことにより、〔事故時のアークが引火源となって爆発の可能性が高くなる〕と言うことからではないかと思われます。 しかし、必ずしも「防爆エリアではTN接地は採用できない」という事はありません。
TT方式は、電源系統とは独立した接地を機器ごとに行うため、一部の防爆エリアでは推奨されることがあります。これは、電源系統に障害が発生した場合でも、機器の接地が保たれて安全性が向上するからです。TN方式を防爆エリアで採用する場合は、そのエリアの特性やリスク評価に基づいて、適切な防爆構造と組み合わせることが重要です。 例えば、中性線(N)と保護導体(PE)を共用する TN-C方式および部分的に共用する TN-C-S方式よりも、完全に分離する TN-S方式を採用するなどの配慮も必要です。
防爆エリアでは、電気設備に関して、① 防爆認証を受けた電気機器の使用、② 適切な接地システムの選定と設計、③ 火花や静電気を発生させない工夫など、特別な配慮が必要です。 防爆エリアでの接地システムの選定には、専門家のアドバイスや、労働安全衛生規則、電気機械器具防爆構造規格などの関連規則を参照することをお勧めします。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)