送電線に落雷して、雷撃による異常電圧(雷サージ)が送電線に入り、伝搬して変圧器(66kV/11kV)に入射するとその雷サージは変圧器の二次側に現れるのでしょうか。 その場合、素直に変圧比で分降圧した大きさのサージが現れると考えて良いのでしょうか。
送電線に雷サージが発生した場合、そのサージは変圧器に入射し、一次側から二次側へと伝播します。 しかし、サージが二次側に現れる形は、単純に変圧比で降圧したものとはなりません。
変圧器の動作原理により、一次巻線側にかかった電圧により磁束が発生し、その磁束が二次側巻線を貫通することによって二次側に電圧を起こします。 しかし、雷サージは非常に高速で変化する電圧・電流のパルスであり、変圧器の巻線内部での電位分布は、巻線の物理的な構造や電磁気的な特性、さらにはサージの周波数や立ち上がり時間などにも影響を受けます。 したがって、雷サージが変圧器を通過した後の電圧は、単純な変圧比による降圧だけでなく、これらの要素によっても変化します。 具体的な影響は、変圧器の設計や雷サージの特性によりますので、詳細な分析やシミュレーションが必要となります。
質疑応答 2024-0287〔発電機固定子巻線の対サージ電圧(雷過電圧)保護限界〕で紹介したように、送電鉄塔、送電線、変圧器および発電機を含む系統をEMTP(Electro-Magnetic Transients Program)でモデリングし、シミュレーションした例が下記のWeb Siteに載っていますのでご参考にして下さい。
https://www.chuden.co.jp/resource/seicho_kaihatsu/kaihatsu/kai_library/news/news_158_13.pdf :火力発電所のタービン発電機固定子コイルに発生する雷過電圧評価(電力技術研究所)
また、送電線の雷異常電圧とその対策については、下記の Web Site をご参考にして下さい。
https://jeea.or.jp/course/contents/04103/ : 送電線の異常電圧とその対策(公益社団法人日本電機技術者会)
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)