質疑応答 2024-0291 〔回転機のねじり共振〕 で、回転機のねじり共振、トルク変動、ねじり固有振動数などの用語の意味、ねじり共振を回避する方法、ねじり共振が発生した場合の対処法等について説明して頂いていますが、ねじり共振による電動機シャフト破損事例、および再発防止策について紹介して下さい。
弊社にて2020年に、運転中の電動機軸受温度が急上昇し100℃まで到達したため、プラントを緊急停止させるトラブルが発生した。 現地確認の結果、電動機シャフトの折損を確認した。 電動機の仕様は以下のとおりである。
- 三相誘導電動機(2008年製)
- 被駆動機:ファン(IDF)
- 定格仕様:330kW、416V
- 駆動方式:インバータ(2008年製)
シャフト破断面の調査から、軸系においてねじり共振が発生、繰返し応力による疲労破断が原因と断定された。 2017年以降、プラント運転条件の変化により負荷が低下したことにより、運転周波数が減少しねじり共振領域(メーカー計算値)での運転となった。 当該電動機は、メーカーに補修を依頼し、ロータの新製を行った。 また、運転管理においては、ねじり共振領域の周波数での運転を避けることとした。 本トラブルにおける弊社の再発防止策について、以下に説明する。
ねじり共振が発生する要因
ねじり共振が発生する要因を大別すると下記の4つになります。
1. 負荷トルク変動(機械的要因)
往復動式機械(レシプロ)は、ピストン運動によるトルク変動が大きいため、軸系の固有周波数と一致する可能性がある。〔例:往復動圧縮機、往復動ポンプなど〕
2. 固有周波数低下(構造起因)
軸系が長くて細い場合は、固有周波数が低下し、運転範囲まで低下する可能性がある。 〔例:タービン発電機、撹拌機、押し出し機、クーリングタワーファンなど〕
3. 固有周波数低下(体格起因)
軸系の体格および慣性モーメント比が大きい場合は、固有周波数が低下し、運転範囲まで低下する可能性がある。〔電動機出力・極数・慣性モーメント (JL/JM) が大きい設備は、ねじり共振の影響有無の確認が必要(fn = 70Hz以下が想定される設備)〕
4. インバータ要因(トルク脈動)
インバータ駆動電動機では、出力電流・出力電圧の変動により、出力周波数のn倍にトルクリップル(トルク脈動)が発生し、軸系の固有振動数と一致する可能性がある。〔共振応答倍率 RF が大きい場合は、ねじり共振有無の確認が必要 (20倍を超過すると軸系の許容トルクを超過する可能性が高まる)〕
ねじり共振の解析要否判定フローチャート
ねじり共振の解析要否判定フローチャート(図5)を作成し、電動機の既設設備及び新設更新時に対して、ねじり共振の影響有無を確認するようルール化した。 このフローチャートで〔解析が必要〕なった場合は、機械および電機メーカーと協働で対策を検討することにした。 (三井化学株式会社 赤松勇紀)