質疑応答 2024-0293〔サイリスタ駆動の電気ヒータ〕で、サイリスタ駆動の電気ヒータの制御方式、用途、特長、ガスタービン発電機などの回転機に与える影響などについてして頂いていますが、ガスタービン発電機がトリップした事例がありましたらご紹介して下さい。
サイリスタに流れる電流の周波数成分とガスタービン発電機の機械的な固有振動数の共振により、ガスタービン発電機がトリップした事例が報告されています。
1. 運転状況
図1 に示す通り、22MW定格のガスタービン発電機が3MW程度の低負荷で運転している状況において、定格110kWのサイリスタ駆動電気ヒータを Single Cyclic Mode で、70~80%の負荷率で運転した際に、ガスタービン発電機が振動でトリップしてしまう事例が報告されています。(Single Cyclic Mode については、質疑応答 2024-0293〔サイリスタ駆動の電気ヒータ〕を、サイリスタ駆動電気ヒータの外観については、下の写真をご参照下さい) 2. トラブルの原因と対応策
Single Cyclic Mode はその制御方式から、ヒータの出力設定(定格に対する割合 [%]) により、負荷電流波形の周期が決定されます。 例えば、電源周波数が50Hzの系統で、サイリスタ駆動電気ヒータを75%負荷で運転した場合、図2 に示すように、負荷電流の周期は80ms、つまり12.5Hzとなります。
報告されているトラブル事例では、上記のサイリスタを流れる負荷電流の周波数成分と、ガスタービン発電機の機械的な固有振動数が共振した事により振動が発生し、トリップしたと考えられています。 ガスタービン発電機が低負荷運転だったこともあり、共振の影響を顕著に受け、共振が発生しトリップしたと考えられます。
対応策として、図3に示すように、運転モードを Burst Firing Mode に変更し、その周期をガスタービン発電機の機械的な固有振動数を外した値に設定しました。 Burst Firing Mode は負荷電流の周期を任意に設定可能であることが特徴の1つであり、共振の問題が出た際の対応策として有効です。
3. 設計および試運転上の注意点
本事例から考えられる、設計および試運転上の留意点は下記のとおりです。
- 電気ヒータを駆動するサイリスタ盤において、Burst Firing Mode での運転が可能であることを確認する。
- 発電機の固有振動数(一般的には10-15Hz)を確認し、その周波数を外した運転が可能であることを確認する。
- ヒータの寿命等を考慮して、基本的には、ヒータメーカーの推奨は Single Cyclic Mode である。 よって、試運転時には、まずは Single Cyclic Mode で運転し、振動トラブルが発生した場合に Burst Firing Mode に切り替える。
補足として、本トラブルはガスタービン発電機が低負荷運転であったため、共振の影響を顕著に受け振動が発生し、トリップしたと考えられます。 このトラブル事例は、本質的には 〔回転機の機械的固有振動数と負荷電流との共振である〕ため、ガスタービン発電機だけでなく、スチームタービン発電機などの回転機でも同様のトラブルが発生する可能性があります。
(エンジニアリング会社の方の回答です)