これまでに、質疑応答 2020-0040〔等電位ボンディング〕および 2023-0230〔接地工事の種類と等電位ボンディング〕で、等電位ボンディングに関する説明がありますが、〔等電位ボンディング〕と〔雷等電位ボンディング〕の違いと目的について説明して下さい。
下記のように〔等電位ボンディング〕は、接地線に地絡電流が流れた場合の感電事故防止を目指すのに対し、〔雷等電位ボンディング〕は、特に雷サージによる事故を防止することを目指していると言えます。
等電位ボンディング
〔等電位ボンディング〕とは、A種~D種接地極および建物の鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の建物の導電性部分間において、その部分間に発生する電位差を軽減するために施す電気的接続を言います。〔電気設備の技術基準の解釈〕の第18条 第1項 では、構造物の導電性部分間に50Vを超える接触電圧が発生しないようにとしています。(統合接地については、質疑応答2023-0230 〔接地工事の種類と等電位ボンディング〕 参照)
雷等電位ボンディング
一方、〔雷等電位ボンディング〕とは、雷サージによる事故を防止するための接続方式です(JIS Z 9290シリーズ)。 具体的には、建物内の全ての金属部分を直接、または SPD(避雷器)を介して接地部(ボンディング用バーなど)に接続します。 これにより、落雷時に発生する各金属部分間および各機器間に電位差を発生させず、機器を保護することが出来ます。
〔雷等電位ボンディング〕 についてもう少し詳しく説明すると、例えば、外部雷保護システム(外部 LPS : Lightning Protection System)の受雷部(旧 JISで〔避雷針〕と言っていた)に落雷があると、受雷部と続している雷保護システムの接地極に雷電流が流れ、接地電位が上昇します。 この時、個別接地であるA種~D種など他の接地極との間で電位差が生じ、建物内部の設備の絶縁を破壊する恐れがあります。 また、雷によって発生した電磁界や誘導雷の侵入によって、設備等の金属パネルに電位が発生じ、この時、人がこの金属パネルを触れていると感電する危険性があります。 これらの問題を防ぐために、雷等電位ボンディングを行い、建物の受雷部に落雷した時、接地間で電位差が発生しないようにします。
ただし、接地の電位は上昇するので、電源線路、通信線路および信号線路などが他の建物などへ配線されている場合や遠方で接地されている場合には、SPD が必要となります。 SPD は、雷サージをバイパスして大地に流し、機器の絶縁破壊を防ぎます。(等電位化されている建物間の保護については、質疑応答 2024-0299〔等電位化されている建物間の保護〕参照)
参考:〔等電位ボンディングと雷等電位ボンディング〕について、下記のWeb Site に〔図解〕入りで、分かり易い説明がありますのでご参考にして下さい。 また、SPDと雷等電位ボンディングについては、質疑応答 2024-0298 〔雷等電位ボンディングとSPDの適用〕をご参照下さい。
- https://www.denki-nyumon.com/tougousetti.html : 電気☆入門 統合接地
- https://www.otowadenki.co.jp/necessity3/ : 雷サージ対策 SPDによる等電位化(音羽電機工業株式会社)
- https://www.sankosha.co.jp/basic-lightning-protection/glossary/equipotential-bonding/ : 雷等電位ボンディング(株式会社サンコーシヤ)
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)