高圧ケーブル遮へい層の接地方式について、① 遮へい層を接地する目的、② 高圧ケーブルの遮へい層を接地しない場合の危険な状態、③ 遮へい層の接地方式 などについて説明して下さい。
これまでにも、質疑応答 2020-0026, 2023-0226, 2023-0227 で、高圧ケーブル遮へい層の接地方式についての説明がありますが、ここでは、ご質問の、① 遮へい層を接地する目的、② 高圧ケーブルの遮へい層を接地しない場合の危険な状態、③ 遮へい層の接地方式 について説明します。
1. 遮へい層を接地する目的
高圧ケーブルには、保安上の問題およびケーブルの性能向上の目的から銅テープ等による金属遮へい層が設けられている。 この遮へい層は、絶縁体に加わる電界の方向を均一にして耐電圧特性を高める他、終端接続部で接地することによって感電および誘導防止するなどの役割があります。
図1 のように、金属遮へい層に正常に接地を施した場合、導体~外部半導電層および遮へい銅テープ(遮へい層)間が印加電圧とほぼ同じ電圧となる。 すなわち、遮へい層は大地と同電位となり、安全な状態に保たれます。 一方、図2 のように、金属遮へい層が接地されていない場合、ケーブル導体~遮へい銅テープ(遮へい層)間(C1)、および遮へい銅テープ(遮へい層)~大地間(C2)に対し、印加電圧 V は V1 および V2 に分割されます。 その際は、以下の関係式となりますが、通常 C1 に比べ C2 が非常に小さい為、遮へい層に発生する V2 は、印加電圧に近い値となることから、第2項 に記載したような〔危険な状態〕になる可能性があります。
V=V1+V2, V1=C2/C1×V2, V2=C1/C2×V1 => C1>>C2よりV2>>V1, V=V1+V2≒V2
出典 : https://www.jpcaa.or.jp/pdf/gijyutu/technical5_wtt.pdf 日本電力ケーブル接続技術協会、電力ケーブル接続部を安全にお使い頂くために(施工・工事編その5)、技術・環境委員会 第2WG
2. 高圧ケーブルの遮へい層を接地しない場合の危険な状態
高圧ケーブルの遮へい層(シース)を接地しない場合、下記のような危険が生じます。 遮へい層の接地は、これらの危険を回避するために重要です。
- 静電誘導による電撃の危険: ① 遮へい層に静電容量に反比例する電位差が生じる、② 人が触れた場合、静電誘導による誘導電圧が発生し、電撃を受ける可能性がある。
- 渦電流による発熱と絶縁劣化: ① 高圧ケーブルの芯線を流れる電流により、銅テープ遮へい層に渦電流が発生する。 ② この渦電流による発熱でケーブルが絶縁劣化する可能性がある。
- 耐電圧試験時の問題: 耐電圧試験時に、試験機がトリップする可能性がある。
3. 遮へい層の接地方式
遮へい層の接地方式には片端接地と両端接地の2種類があり、それぞれの特長を 表1 に纏めました。 需要家が敷設する引き込み用高圧ケーブルの接地方式は、一般的に片端接地方式が採用されていますが、ケーブルの亘長が長くなると両端接地が採用される場合があります。 誘起電圧に対する規定はありませんが、仮に通常状態で安全電圧である〔50V以下〕を目安とすることもあります。
関連する質疑応答 :
この Q&A Community の中で、高圧ケーブル遮へい層の接地方式について、下記のような質疑応答がありますので、併せてご参照下さい。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)