VFDを含む電気設備の接地設計にあたっての注意点について説明して下さい。 出来ましたらどうしてそのような対応策が必要なのかも教えて下さい。
VFD(Variable Frequency Drive : 可変速ドライブ)は、可変速制御のために高速のスイッチング素子を使用しています。 このスイッチングによりスイッチングノイズが発生します。 スイッチングノイズは、インバータ、入出力電線、およびモータと大地間の浮遊容量を経由して流れるノイズ電流であり、ノイズ電流の大きさは、浮遊容量とスイッチング速度に関連します(i=C・dv/dt)。 ここでは、ご質問の〔VFDを含む電気設備の接地設計にあたっての注意点〕について回答する前に、インバータが発生するノイズ、およびその対策 (ノイズが伝わるルートによる対策、周辺機器での対策)について整理しておきます。
1. インバータが発生するノイズ
インバータが発生するノイズは、① 伝導ノイズ、② 誘導ノイズ、③ 放射ノイズ の3つのルートを通じて周辺機器に影響を与えます。 ① の 伝導ノイズは、導体を伝わって周辺機器に影響を与えるもので、主回路や制御回路の配線を分離することで防止できます。 ② の 誘導ノイズは、近くの電線や信号線にノイズが誘導されるもので、適切な配線やシールド線の使用が効果的です。 ③ の 放射ノイズは、主回路電線や接地線がアンテナとなって放射され、周辺機器に影響を与えるものです。
2. ノイズの伝わるルートによる対策
ノイズの伝わるルートによる対策例として、① 主回路線(主回路の入力・出力線)と制御信号線などを区別し、距離を離して配線する(放射ノイズ、誘導ノイズに効果)、② ノイズフィルタを設置する(伝導ノイズ、放射ノイズに効果)、③ 主回路線にシールド線を使用するか、金属電線管に収納し、接地(シールド)する(伝導ノイズ、誘導ノイズ、放射ノイズに効果)、④ インバータを金属製制御盤にて覆い、接地(シールド)する(放射ノイズ、誘導ノイズに効果)、⑤ 制御信号線にシールド線、ツイストシールド線を採用する(放射ノイズ、誘導ノイズに効果)、⑥ 適確な接地工事を施す(誘導ノイズに効果)、⑦ インバータと他の機器は、別々に接地する(誘導ノイズに効果)、➇ インバータのPWMキャリア周波数の設定値を下げる。=> モータの磁気騒音は増加する。(伝導ノイズ、誘導ノイズ、放射ノイズに効果)などの方法があります。
3. 周辺機器での対策
周辺機器での対策例として、① インバータと別の電源系統にする(伝導ノイズに効果)、② 電源に絶縁トランスを使用する(伝導ノイズに効果)、③ ノイズフィルタを設置する(伝導ノイズ、放射ノイズに効果)、④ インバータから離して設置する(放射ノイズ、誘導ノイズに効果)などの方法があります。
4. VFDを含む電気設備の接地設計にあたっての注意点
最後になりますが、ご質問の〔VFDを含む電気設備の接地設計にあたっての注意点〕について整理します。 VFD の接地にあたっては以下の点に注意して下さい。
- 接地線は極力太い接地線を使用し、極力インバータの近くで接地する。=> インバータ側で接地することにより輻射ノイズの発生エリア(インバータ~接地間)を制限できる。
- 接地線は主回路線、制御信号から離す。=> インバータのアースラインノイズからの誘導作用の影響を最小とするため。
- インバータと他の機器の接地は、別々の専用接地が望ましい。=> 他の機器と共用接地を行う場合は、接地点まで専用の接地線で接地する。
- モータ、トランス等を一本の接地線で共通に使用するのは避ける。=> インバータのアースラインノイズの流入を最小とするため。
インバータが発生するノイズとその対応策、VFD を含む電気設備の接地設計にあたっての注意点 については、Web Site にもたくさんの資料がアップロードされています。 下記の関連資料をはじめ、メーカー各社のマニュアル等も併せてご参考にして下さい。
関連資料
- インバータの上手な使い方 (電気ノイズ予防対策について):JEMA(一般社団法人 日本電機工業会) https://www.jema-net.or.jp/jema/data/S5202%2820210924%29.pdf
- インバータの基礎知識(インバータの問題点であるノイズとその対策): 技術コラム モーノポンプ https://www.mohno-pump.co.jp/learning/manabiya/b3e.html
- TOSHIBA インバータアプリケーションマニュアル〔E6589081〕インバータノイズ対策について : 東芝シュネデール・インバータ株式会社
(産業用電気設備関係の方からの回答です)