配電盤内での短絡事故において、アーク短絡が移行する現象について、① 配電盤内での短絡事故でアーク短絡が移行する現象、② 配電盤内での短絡事故でアーク短絡が移行する現象、③ アーク短絡移行現象の事例紹介、などについて説明して下さい。
ご質問の ①②③ について、以下のように説明します。第7章〔アークフラッシュとその対策〕の質疑応答も併せてご参照下さい。
1.配電盤内での短絡事故でアーク短絡が移行する現象
配電盤内での短絡事故においてアーク短絡が移行する現象とは、短絡電流が発生した際にアーク放電が発生し、そのアークが他の部分に移動していく現象を指します。 アーク放電は非常に高温で、周囲の絶縁体や金属部分を溶かし、さらに広範囲にわたって損傷を引き起こす可能性があります。 このようなアーク短絡の移行現象は、以下のようなプロセスで進行し、設備の大規模な損傷や火災の原因となるため適切な対策が必要です。
- 短絡事故発生: 電気配線の被覆が損傷し、異なる電位を持つ導体が直接接触することで短絡が発生します。
- アーク放電: 短絡により大電流が流れ、絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生します。
- アークの移行: アーク放電が発生すると、その高温により周囲の絶縁体や金属が溶け、アークが他の部分に移動していきます。
2.配電盤内での短絡事故でアーク短絡が移行する現象
アーク短絡の防止策にはいくつかの方法があります。 以下に一般的な対策を挙げます。 これらの対策を講じることで、アーク短絡のリスクを大幅に減少させることができます。
- 真空遮断器の使用: 真空遮断器は、アーク放電を真空中で拡散させて消失させる装置です。 これにより、アーク放電の影響を最小限に抑えることができます。
- 絶縁の強化: 電気機器や配線の絶縁を強化することで、短絡の発生を防ぎます。 定期的な絶縁点検も重要です。
- 過電流遮断器の正しい設定: 回路の短絡電流を遮断する能力を持つ過電流遮断器を設置することで、短絡事故を防止します。 質疑応答2020-0016〔アークフラッシュ計算手法、規格、および便利なツール〕の 関連資料7-1 〔アークフラッシュ計算手法と対策〕などで説明しているように、アークフラッシュ計算を行い、遮断器や保護継電器を設定するなど、適切なアークフラッシュ対策を講じることも必要です。
- 定期点検の徹底: 設備機器や配線の定期点検を行い、異常がないか確認することが重要です。 小動物などが配電盤内に入り込むことが無いようにすることも重要です。
- 適切な作業手順の遵守: 電気工事やメンテナンス作業時には、必ず電源を遮断し、適切な安全装備を使用することが必要です。
3. アーク短絡移行現象の事例紹介
図1 のように、列盤構成の配電盤内に小動物が侵入し、最左側の盤の電源引き込み部の高圧母線に接触して短絡事故が発生し、母線間アーク短絡が発生、そのアーク短絡が最右側の盤の右側板まで移行したという事例があります。
この状況を順を追って説明すると、① 高圧盤内電源側部分に小動物が高圧母線に接触、② 短絡事故発生、 ③ 短絡による火炎、金属粉飛散により母線間アーク短絡発生、④ アーク短絡により近辺の空気温度上昇(4000K以上)、⑤ 空気温度上昇により空気絶縁破壊、⑥ アーク短絡継続、⑦ アーク電流の電界の作用により右側の盤方向にアークが母線移動、⑧ 右側の盤の母線終端までアーク短絡移動し、母線から右側板等に3相接地短絡が発生に至った。
この現象は一瞬の中で発生し、事故後に母線を観測すると、アークが移動した点状の痕跡が見られた。 この事例では小動物の死骸が存在したため原因が明確になったが、原因となるものが発見されない場合はじっくりと検証して真の原因究明が必要である。
(産業用電気設備関係の方からの回答です)