電気エンジニアのための350の質疑応答〔Q&A 350 Book〕刊行を記念して、ベテラン電気技術者から若手電気技術者へ伝えたいことを聞かせて下さい。
私は42年間、化学系企業の工場における電気設備の設計・施工を担当してまいりました。その経験をもとに、若手電気技術者の皆様へお伝えしたいことを述べさせていただきます。
まず 一つ目は、「自らの技術を向上させる」ことです。会社や組織の看板を外して、自分が何ができる技術者なのか、自ら問い続けて下さい。そのために次の取り組みをお勧めします。
- 自身で実行してみる 計算、設計、作図、プログラム、系統解析、保護協調、工程表の作成、見積、手順書の作成、現場作業、現場操作など、可能な限り自分で実施してみて下さい。依頼するだけでは身につかない、さまざまな気づきを得ることができるでしょう。
- レポートを書く 他の人にとっては当たり前のことでも、自分にとって新たな気づきであれば、文章として残しましょう。これは自身の技術向上のみならず、組織全体の技術の蓄積にもなります。
- トラブルには徹底的に取り組む トラブル対応は、さまざまな技術を習得するための道場です。真の原因を追究しなければ根本的な対策ができず、再発してしまいます。問題に対しては妥協せず、深く取り組んで下さい。
次に 二つ目は、「新しい技術への挑戦」です。世の中の最新技術に挑戦することが理想的ですが、自分にとって新しい技術も立派な新技術です。日々の積み重ねにより、専門性を磨きスペシャリストとして成長することができるでしょう。
三つ目は、「他社、他組織、そして世界とのつながりを持つこと」です。 井の中の蛙とならぬよう、積極的に交流の機会を作って下さい。他者と比較することで、自分の技術が足りない部分や方向性を見出すことができます。
四つ目は、「発注者と受注者はパートナーである」という意識を持つことです。時に、発注者の方が威圧的な態度を取ることもありますが、発注者と受注者は同じ目標を目指し、力を合わせて完遂するパートナーです。この意識を忘れずに業務を遂行して下さい。
最後に、この「電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ」を運営されている亀田様に感謝申し上げます。世の中の電気技術者が直面する現実的な問題について、皆様の力を借りて解決策を取りまとめていただきました。これらは文献や教科書では得がたい内容であり、日本の電気技術者にとってのバイブルとなることでしょう。 (西 隆男)