立地はシンガポールであり、日本の法制下ではないのですが、客先より「接地極の埋設深さを日本の法規どおりせよ」と依頼が到来しています。下記が客先からの質問です。接地極の埋設深さに関して、下記の件についてご教示下さい。
- 電気設備の技術基準で750mmより深く埋設すると規定されている理由
- 接触電圧、歩幅電圧による感電のリスクがないか。
- その他、安全上の問題がないか。
当方の理解は、接地極ではなく接地線の埋設深さを規定することで、「誤って接地線を切ることが無いように規定している」と思います。客先は、「感電のリスク」を気にしているようですが、違うと思っています。
図1 に示された接地極の埋設深さ、接地極と金属体との離隔、合成樹脂管による保護については、「電気設備の技術基準の解釈 第17条」 に示されています。この理由の詳細は「電気設備の技術基準の解釈の解説(解釈の解説)」に示されており、客先の方が 「感電のリスク」を気にされているように、その内容から感電の危険性を考慮したものと考えられます。
ご質問の (1) に関して、「同条項 第三号の解説」では、『故障時に接地線に電流が流れると、接地極の接地抵抗によって大地との間に電位差を生じ、接地極を中心として地表面に電位傾度が現れるので、人が触れるおそれがある場所にA種接地工事の接地線を施設する場合には、接地極を十分な深さに埋設し、かつ、接地極から地上部分までの接地線を大地から十分に絶縁すること』とし、その方法を示しています。
接触電圧、歩幅電圧による危険性を低減させるためには、地表面に発生する電位上昇を低く抑えることが有効です。このために接地極との離隔距離を設けることが必要で、その距離が750㎜以上必要であるとの解釈です。この詳細については、「電気設備の技術基準の解釈の解説」を参照して下さい。なお、『発電所、変電所などの場所において、接地網などで接地してあって、接地極の近傍の大地との間に生じる電位差により危険を及ぼすおそれがないときは、第三号の施設を省略できる。』とされています。
以上に示すように、この規程は、ご質問の (2) のように、接触電圧、歩幅電圧による「感電のリスク」と関連しています。〔接地電位、接触電圧および歩幅電圧〕については、質疑応答2023-0240〔感電と感電対策(接地の目的)〕の中の 〔接地電位、接触電圧および歩幅電圧〕に関する説明を参照して下さい。
また、ご質問の (3) に関連して、解釈の解説に記載はありませんが、外部からの物理的なダメージ(他工事や接地極・接地線の地表面露出による接地極破損や接地線の断線など)に対する耐性の向上が見込まれます。また、接地線が浅く埋設されると、季節変動変動や地面の凍結や融解による影響を受け接地抵抗値が変動しやすくなります。 ある程度の深さで埋設することで、これらのリスクを軽減し、電気設備の安定性と信頼性を高めることができます。
追加質問と回答:
Q1: 化学工場などでは、接地線を地上のケーブルラックに敷設することが良くあります(地上の接地網)。 その主幹接地線にA種接地を繋げており、その場合も接地網と考えることができるのでしょうか?
A1: 「電気設備の技術基準の解釈 第17条 第三号の解説」にある接地網は、接地線を網状に埋設された接地極「網状(メッシュ)接地」を指していると考えます。一般的に、接地網というと大地に埋設された接地極のことを指しますが、『接地網』という言葉の定義は無いと思いますので、ご質問にある内容のことを接地網と呼ぶケースもあるかもしれません。
Q2: 上記の質問とは少し異なりますが、化学工場などでは、静電接地の目的で、パイプラックおよび配管、ケーブルラックなどを積極的に接地しています。実質的には、A種接地工事(またはC種接地工事)に繋がってしまっていると言えます。このような場合は、どのような取扱いになるのでしょうか? むしろ、共用接地として積極的に接続した方が良いのでしょうか?
A2: 化学工場などでは、静電気や雷電流(サージ)による火花放電が危険視されていると思います。火花放電が生じやすい、中途半端な接続状態が一番危険のように思います。『接続するなら積極的に接続し接地の共用化を行う。 絶縁するならしっかりと絶縁する』など、メリハリのある対策が重要に思います。